EXHIBITIONS

村山悟郎「Painting Folding」

2020.12.19 - 2021.01.16

村山悟郎 3D structure of the 2019-nCoV coronavirus spike, a target for vaccine against Covid-19. PDB 6VSB — reference Image

 村山悟郎の個展「Painting Folding」がTakuro Someya Contemporary Artで開催される。

 村山は1983年東京都生まれ。東京藝術大学で絵画を学び、「いかに世界は創発するか?」という現代の生命科学論的な思索を、身体や行為を伴った芸術実践へと拡張するアーティスト。有機的に麻布を織り進め、織り上げられてできた描く領域へ線描を施す、膨大な繰り返しによるペインティング作品で注目を集めて以降、セルオートマトン・ドローイングや、要素をカットアップし組み替えた画像や映像など多様なメディアによる作品群を発表し、進化・再帰的なルールを設定したうえで、学習・自己組織化などの生命的なプロセスやパターンを組み込みんできた。

 その後、村山は、現代科学の認識論において重要な位置を占めるコンピュータ・シミュレーションを中心的モチーフとし、「質料」を伴った制作(ポイエーシス)を展開。19年のあいちトリエンナーレでは、AIによるバイオメトリクスの技術に着目し、機械が人間を検知するシステムを通して、人間の知覚のあり方を逆照射する作品を発表。また近作では、科学者とのコラボレーションも重要な要素としている。
 
 パンデミックによってコンピュータやメディアによる人類の認識論的現状があらわになった2020年。ひとりの人間が取得できる情報量と、取りうる行動の選択肢を、いかに結び合わせるか。村山は、シミュレーションによる世界認識や、ネットワーク状の情報生成など、創発の科学はこの問いにおいてキー概念になるはずと見通している。

 本展で村山は、代表作の織物絵画を展開させ、ウイルスの構造にも大きく関係する「たんぱく質のフォールディング」の三次元構造の折りたたみの生成過程を参照した新作を発表。科学技術の認識論を人間のイマジネーションへと架橋する村山の芸術的実践は、これからの私たちと情報・科学技術とのかかわり方についての思索を促すだろう。