EXHIBITIONS

サーリネンとフィンランドの美しい建築 展

ポホヨラ保険会社ビルディングの中央らせん階段 Photo © Museum of Finnish Architecture/ Karina Kurz, 2008

建築家エリエル・サーリネンの肖像写真 Photo: Daniel Nyblin/ Finnish Heritage Agency, 1897

ヴィトレスクのサーリネン邸のダイニングルーム Photo: Ilari Järvinen/Finnish Heritage Agency, 2012

エリエル・サーリネン スール=メリヨキ邸、広間の透視図 1902 フィンランド建築博物館蔵

夜のヘルシンキ中央駅玄関、エーミル・ヴィークストロムによる彫像《ランタンを持つ人》 Photo © Museum of Finnish Architecture/ Foto Roos

エリエル・サーリネン シカゴ・トリビューン本社ビル国際設計競技応募案 透視図 1922 フィンランド建築博物館蔵

 パナソニック汐留美術館で、「サーリネンとフィンランドの美しい建築 展」が開催される。

 エリエル・サーリネン(1873〜1950)は、フィンランドのモダニズムの原点を築いた人物。サーリネンはヘルシンキ工科大学在学中に出会ったゲセリウスとリンドグレンと共同で設計事務所を設立すると、1900年パリ万国博覧会フィンランド館の建築が好評を博し、見事なデビューを果たした。初期の作風は、ナショナル・ロマンティシズムと称される、アール・ヌーヴォーの影響をうかがわせながらも、民族の独自の文化的ルーツを表現した建築で、当時、独立を求めていたフィンランドの人々を鼓舞させるものだった。

 サーリネン、ゲセリウスとリンドグレンの3人はやがて、静かな自然のなかで暮らしながら協働し、芸術家たちと交流できる理想の生活の場として、ヘルシンキ西方の湖畔に「ヴィトレスク」をつくった。住宅、商業建築、公共建築、駅や都市のデザインと、次第に幅を広げていくサーリネンの設計活動は、20世紀前半の近代化と手を携えていた。その作風は、多様な文化を受け容れつつ民族のルーツを希求した初期のスタイルから、独自の形態を通じて新しいフィンランドらしさを提示しようというモダニズムへと展開された。

 本展は、サーリネンが1923年に渡米するまでのフィンランド時代にスポットを当て、図面や写真、家具や生活のデザインといった作品資料の展示を通して、その活動をたどる。

 つねに革新を求めつつ、自然や風土に根ざし、光と陰影をとりこんで豊かな表情を見せるサーリネンのデザインは、生活のあり方を一歩立ち止まって考え直す時を迎えているいまの私たちの心に深く語りかけるだろう。

 会場構成は気鋭の若手建築事務所、久保都島建築設計事務所が担当。フィンランドの独立の足がかりを築いた1900年パリ万国博覧会フィンランド館を、CGと新作の模型を使って館内に再現するほか、家具や陶磁器、テキスタイルなど、近代建築の巨匠アルヴァ・アアルトも影響を受けた格調高いデザインを多角的に紹介する。