アンディ・ホープ1930が日本初個展を開催。1950年代から続くSFコミックから着想を得た新作を発表
ペインティングやドローイング、立体、映像といった様々なメディアで、ハイカルチャーとローカルチャーが混在する独自の表現を行うアンディ・ホープ1930が東京・南青山のRAT HOLE GALLERYで日本初となる個展を開催。会期は2018年3月22日〜5月20日。
アンディ・ホープ1930は1963年ドイツ生まれベルリン在住のアーティスト。ハイカルチャーとローカルチャー、個人的な事象と社会的な問題とが入り混じった独自の図像を、ペインティングやドローイング、立体、映像といった複数のメディアを交えて制作、革新的なインスタレーションを通して発表している。
ホープにとって「1930年」は、ロシア構成主義そしてモダニズムが終焉を迎えると同時に、スーパーヒーローがコミックに登場し始めるという、歴史のターニングポイントとなる重要な断絶点。そこで、制作活動を通して、様々な時空をタイムトラベルするためのフィクショナルなペルソナとして、キャリア初期から本名のアンドレアス・ホーファーではなく、「アンディ・ホープ1930」とサインをし続け、2010年には改名も行っている。
ホープの日本初個展となる本展では、新作のペインティング、立体作品を発表。「ヴェネチア ビエンナーレ2017」で発表した《Vertical Horizon》の表現から展開するペインティング作品や、金融市場のフォーマットと抽象絵画のボキャブラリーを交差させた「CDOシリーズ」の新作、「超人的なもの」のイメージから制作された立体作品などが並ぶ。
これらの新作に一貫する「未来の芸術作品」という着想は、1950年から続くアメリカのSFコミック『ストレンジ・アドベンチャーズ』から得たもの。これは、冴えないSFアーティストが不思議な閃光とともに突如現れた謎の立体物を作品として発表し、美術界で注目を浴びるものの、その謎の立体物が未来のスーパー兵器が誤って過去に不時着したものだったと明らかになり、自らの作品を手放さず偽りのキャリアにしがみつくのか、あるいは地球を救うために作品を手放すのかという困難な決断を迫られる、という物語だ。
SFコミックの物語、そして、アール・ヌーヴォーや構成主義、宇宙現象や通信技術、金融市場といった様々なモチーフからつくりあげられたホープの作品は、現代の「謎の立体物」として、人々が抱える妄想や欠損といったものを浮かび上がらせていく。