相続税猶予の対象に現代美術を。文科省による税制改正要望の狙いとは?
文部科学省が「令和3年度文部科学省税制改正要望事項」を公開。このなかでは、相続税猶予の対象を拡充する要望も含まれている。
文部科学省は、「令和3年度文部科学省税制改正要望事項」を公開した。文科省は今回の税制改正要望事項において、「美術品市場の活性化のため現代美術品の寄託に係る相続税の特例措置の拡充」を目指す。
これまで、個人が美術品を美術館・博物館(博物館法に規定する博物館または同法の規定に基づき博物館に相当する施設として指定された施設)に寄託することで、その美術品に係る課税価格の80パーセントに対応する相続税の納税が猶予されるという制度はあった。
しかしながらこの美術品には制約があり、「重要文化財として指定された絵画、彫刻、工芸品その他の有形の文化的所産である動産」または「 登録有形文化財のうち世界文化の見地から歴史上、芸術上又は学 術上特に優れた価値を有するもの」という条件の「特定美術品」のみが対象とされてきた。
今回、文科省はこの相続税猶予の対象となる財について、現行の特定美術品に加えて、一定の現代美術品を追加することを要望。その背景にあるのは、現代美術作品を「ナショナルストック」としてとらえつつ、市場整備を急ぎたいという文科省(文化庁)の考えだ。相続税猶予の対象に現代美術作品を加えることで、海外流出を防ぎつつ、国内美術館への収蔵およびその展示を促進することで、間接的に美術品市場の活性化を狙う。