第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展、日本館展示のキュレーターは大西麻貴に
国際交流基金が2023年に予定されている第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の日本館展示キュレーターを発表。大西麻貴が選ばれた
2023年5月から11月にかけてイタリア・ヴェネチアで開催される「第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」。その日本館展示のキュレーターが、建築家の大西麻貴に決定した。
大西麻貴は1983年愛知県生まれ。2006年京都大学工学部建築学科卒業、08年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。08年より「大西麻貴+百田有希/o+h」を共同主宰している。おもな作品に「シェルターインクルーシブプレイス コパル(山形市南部児童遊戯施設)」(2022)、「多賀町中央公民館 多賀結いの森」(2019)、「Good Job! Center KASHIBA」(2016)、「二重螺旋の家」(2011)などがある。
大西が提示した案は「愛される建築を目指して」(英語タイトル:Architecture,a place of mind)と題された。大西は、均質で管理された空間が再生産される現代を、建築と人々との距離が遠くなった時代と指摘。いっぽうで現代は「個」から出発した小さな共感の輪が重なりあいながら全体を包摂する社会へ変化しているとしており、この時代にふさわしい個性的で寛容な建築を「愛される建築」と名づけ、その可能性を展示を通して考え深めていく計画を提示した。
本案では、日本館そのものを展示物としてとらえパビリオン自体が「愛される建築」の体現を目指す。言葉を介さずとも空間体験として感じ取ることのできる展示を志向し、建築家・吉阪隆正が設計した日本館建築と呼応するものになるという。
外観はやわらかさや生命を感じさせる佇まいを重視し、吉阪による日本館にテキスタイルのマントを着せて、思わず近寄りたくなるものに変化させるという。このテキスタイルはテキスタイルデザイナー/アーティストの森山茜が担当。繊維をつくる過程から福祉施設との対話のなかでつくられ、会期終了後はほかの用途に転用される予定だ。
内部は建築家/水野製陶園ラボの水野太史による光を柔らかく反射するタイルによって、大切なものをしまう宝箱のような空間をつくる計画となっている。ここでは「愛される建築」を考えるうえでヒントとなるインタビュー映像やリサーチをまとめた模型を「宝物」として展示し、その意義や理念を伝える。
ピロティは、来場者との対話を通じてともに考える事ができる半屋外空間として機能。建築家・家成俊勝が代表を務めるdot architectsがこの場所を担当する。バーをしつらえ、居心地よく人々が集まり、語り合う場を作り出すという。このバーでは定期的にトークイベントを実施し、建築家、施工者、運営者、地域の使い手や研究者などが参加する計画だ。
また、展示プロセスの記録やインタビュー撮影を写真家の高野ユリカが担当する。
キュレーションは大西麻貴・百田有希のほか、デザイナーでUMA/design farm代表の原田祐馬、編集者の多田智美がチームとして手がける。これらメンバーは考えるプロセスを重視し、出展作家とともに「愛される建築」とは何かを考え、発展させていく予定。今後は、外部、内部、ピロティでの展示を溶け合わせながら、全体でひとつの展示になることを目指すという。
大西は本展示について次のように語った。「建築を私たちにもっと近いところでとらえる試みになると思う。日本館そのものを対象とし、訪れる人々とともに『愛される建築』とは何かを考えたい」。