「Everything is a Museum」が問いかける美術館の存在。金沢11ヶ所でプロジェクトが展開
金沢市内のアートスペース11ヶ所を会場に、「Everything is a Museum」がスタートした。会期は6月21日まで。
今年元旦に発生した能登半島地震。これに反応するように、金沢市内11ヶ所のアート関連スペースを舞台にしたプロジェクト「Everything is a Museum」が始動した。
このプロジェクトを立ち上げたのは、キュレーターの髙木遊。「Everything is a Museum」は金沢でそれぞれ独自の表現活動を続けてきたスペースに協力を仰ぎ、それぞれのコンセプトに添うかたちで様々な展覧会が企画された。金沢のアートシーンを構成する仲間同士のつながりが、このプロジェクト実現の鍵だ。長年、金沢で活動を続けてきたNPO法人「金沢アートグミ」が本展の起点となる。
参加作家の一例を紹介しよう。例えば2023年6月に誕生したオルタナティブスペース「FOC」では、涌井智仁がフルクサスのメンバーとして知られる塩見允枝子の《真昼のイヴェント》をリアライゼーションした同名作品や、地震によって金沢21世紀美術館での展示が中断された「MONAURALS」シリーズの新作などが展示されている。
またSIDE COREは、震災後に大地が隆起した能登を訪れ、新たな映像作品《new land》(2024)を制作した(展示場所は冊子掲載のQRコードから問い合わせるかたちとなる)。
金沢美術工芸大学の学生らによって運営されている「芸宿」では、小松千倫と中村壮志が作品を展示。黙祷をテーマに制作された中村の《A Minute of Silence》(2024)は、黙祷の歴史を省みつつ、その意味を問いかける静かな映像だ。
これらの作品は「Everything is a Museum」を構成するごく一部に過ぎない。各会場に購入できる冊子を手に取り、美術館という大きなインスティテューションとは異なるかたちで美術を紡ぐ一つひとつのスペースを、星座を結ぶように巡ること。そうした体験によって、美術館の意義を照射する試みとなっている。