Museum from Home:京都国立近代美術館「チェコ・デザイン 100年の旅」
新型コロナウイルスの影響で、会期途中で閉幕した展覧会や臨時休館となってしまった展覧会を紹介する「Museum from Home」。第13回は、開幕日が未定の京都国立近代美術館「チェコ・デザイン 100年の旅」の展示風景と、同館がこの臨時休館に際して取り組んでいる家から楽しめる映像やSNSなどのコンテンツの一部を紹介する。
「チェコ・デザイン 100年の旅」は、チェコ・デザインの100年を、家具やプロダクト、ポスターなど、チェコ国立プラハ工芸美術館所蔵の作品を中心とする約250点の作品により紹介する展覧会だ。歴史軸に沿って作品を紹介することで、チェコ、ひいてはヨーロッパの情勢が20世紀のデザインに与えた影響の一断面を示すものとなっている。
同展では、19世紀後半から1920年代にかけてヨーロッパで流行した、アルフォンス・ミュシャを始めとするアール・ヌーヴォー様式の装飾、チェコ・キュビスム、アール・デコといった潮流を紹介。さらに工業生産品が主流となる30年代、第二次世界大戦とその後の政治体制の転換を経て、90年代に至るまでの系譜を年代順に8つの章に分けて総覧していく。
チェコにおける20世紀のデザインは、ドイツやオーストリア、あるいはフランスの文化から強く影響を受けているが、そのなかでも見え隠れするチェコ独自の民族性を、同展の展示作品からは受け取ることができる。会場は、各年代をクロノロジーで分けつつ、次の10年、あるいは過去の10年が透けてみえるように工夫されており、時代の様式や装飾がどのように移行していくのかを、歴史的経緯も交えながら感じることができる。
巡回展である同展だが、京都国立近代美術館の展示では、グラフィックデザイナー・西村祐一と京都国立近代美術館のキュレーター本橋仁が展示デザインを手がけた。会場全体に構築された木のフレームは、チェコの建築家、ズデニク・ロスマンが出版した『広告におけるタイポグラフィーと写真(Písmo a fotografie v reklamě)』(1938)に掲載された展覧会のデザインを参照している。また、複数の言語をヒエラルキーなく併記し、情報を客観的に伝えるために、スイス・スタイルと呼ばれる国際タイポグラフィー様式を踏襲したことも展示の特徴だ。
さらに、「チェコのおもちゃと子どものためのアート」「チェコ・アニメーション」のふたつの切り口によるテーマ展示も実施。「チェコのおもちゃと子どものためのアート」では、木材加工の副産物として発展し、社会の変化に応じて変化を遂げながら子どもの創造性も支えてきたおもちゃを紹介。「チェコ・アニメーション」では、世界的に評価されているチェコ・アニメーションを、ズデニェク・ミレルによる人気キャラクター「もぐらのクルテク」のセル画展示、また同時代の作品上映を行う。
また、YouTubeの同館公式チャンネルでは「子どもの目でみた展覧会 チェコ・デザイン 100年の旅」も公開している。現在、家で過ごさなければいけない子どもたちに対し、対話を通して作品を解説。まずは、ものを見て自由に自分の考えを述べる、そのいっぽうで作品が生まれた背景にある歴史を知る、というふたつのポイントを抑え、鑑賞の奥深さが伝わるように意図されている。同じ思いから、「紙から本へ チェコのミニブック」という子ども向けの鑑賞ツールも制作、会場にておもに子どもに配布する予定もある。
さらに同展は、臨時休館にともなって「ニコニコ美術館」のサービスを使った展覧会の解説動画や、音声ガイドの公開を実施。加えて、展示されているおもちゃの会話内容を募集するプレゼント企画も開催している。これらの自宅で展覧会を楽しめる企画も併せてチェックしたい。