フェリペ・パントン「Manipulable」

　Gallery COMMONでは、スペイン・バレンシアを拠点に活動するアーティスト、フェリペ・パントンの個展「Manipulable」を開催している。

　パントンは1986年アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。インターネットを軸にしたテクノロジー時代を背景に、グラフィティアーティストとしてのキャリアと学術的な側面の双方から、光のスペクトルの変化をテーマに制作。人と人、人とシステム間でのコミュニケーションに対する世間の理解の変化を見て、VRや遠隔操作アプリを用いたタッチレスで作品に触れる方法など、アート鑑賞概念の障壁を克服する様々なアプローチを試みてきた。

　12歳の時にグラフィティシーンにてアーティストのキャリアをスタートさせ、その後スペインのバレンシア大学でファインアートの学位を取得したパントン。幼少期からのストリートでの経験、学術的知識の組み合わせからなる作家の思想は、制作テーマでもあるデジタル時代における視覚情報の消費プロセスを考察、表現するうえで、極めて重要な位置にある。

　インタラクティブなインスタレーション空間に新作の大型可動作品8点が展示される本展は、パントンにとって2014年以来、日本では初となる大規模個展。また、オプ・アートのヴィクトル・ヴァザルリやベネズエラ出身のカルロス・クルス=ディエスらアーティストからインスピレーションを受けているパントンの作品は、ダイナミズム、変革とデジタルレボリューションを軸にしており、本展は、これらの哲学を直接実践する場ともなる。

　本展のタイトル「Manipulable」は、ラテン語の「manus（手）」を語源とし、「手を使って動かしたり操作したりできるもの、または管理、制御、成形できるもの」を指す。展示作品はこれに伴い、すべて鑑賞者が触れ、アレンジできるよう展示されている。

「光、動き、色彩が私の作品の特徴です。そこに『触れる』という要素を加えることで、皆が作品により近づけることができるのです。今回は初めて、全ての展示作品が鑑賞者によって完成されるよう作りました。鑑賞者が他の消費するものと同様、触れることによる作品との対話は非常に現代的だと思います。そんなセルフ・キュレーションに定義されてる現代の世界に相対した作品を作りたかったのです（フェリペ・パントン）」。