EXHIBITIONS

平田実「ACTION: Vintages from the 1960s」

平田実 BE CLEAN! 首都圏 清掃 整理促進 運動 ハイレッド・センター 1964 © HM Archive

平田実 ポップハップのグリコおじさん 秋山祐徳太子 1967 © HM Archive

 写真家・平田実の個展「ACTION: Vintages from the 1960s」がタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムで開催中。本展では、平田が1960年代に撮影を行った、前衛芸術家たちの活動の膨大な記録のなかから11点のヴィンテージ・プリントを展示している。

 平田は1930年東京都生まれ。国会速記者を経て独学で写真を始め、53年に『アサヒカメラ臨時増刊 國際寫眞サロン』への写真発表をもって実質的な写真家デビューを果たした。これ以降、フリー・フォトジャーナリストとして活動。50〜70年代にかけて、戦後復興から高度経済成長へと向かう東京の街や社会、市井の人々の姿を記録した。2018年没。

 平田が活動していた60年代の日本の美術界では、欧米から拡散したフルクサスをはじめとして、既成の芸術表現から逸脱し、パフォーマンス、ハプニングといった行動や行為による前衛芸術活動が、若い芸術家たちによって盛んに巻き起こっていた。

 平田は、当時の米・NANA通信社東京支局の仕事で篠原有司男の「ボクシング・ペインティング」を撮影したことをきっかけに、美術界との接点を持った。以後、風倉匠や刀根康尚、高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之、小野洋子といった当時気鋭の若手芸術家の面々と交流を深め、作家たちが次々に展開する芸術活動に魅了されると、各々の行為を作品として写真に収めた。

 また、平田は前衛的なパフォーマンスを撮影するだけに留まらず、フォトジャーナリストという自身の立場から、写真記事として活字メディアへ紹介。時には自ら執筆までこなした。自身の眼前で起きる行為を記録し、さらに記事にすることで、現場に偶然居合わせた観客にしか見られることがなかった一時の作品が社会のなかでより多くの人の目に留まる機会をつくるという、作品のプロモーションに貢献した。

 対象や状況に積極的に関与し主体的に撮影を行った平田の写真は、数々のパフォーマンスに関して現存する唯一の記録となるとともに、たんなる記録の域を超え、それ自体が作品としての魅力を備えている。本展では、秋山祐徳太子、集団蜘蛛、ゼロ次元ハイレッド・センター、万博破壊共闘派らのパフォーマンスを収めた作品を紹介する。