EXHIBITIONS

星野道夫 悠久の時を旅する

2021.09.28 - 11.28
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春のアラスカ北極圏、群れにはぐれてさまようカリブー 撮影=星野道夫

 アラスカで暮らし、大自然に生きる動物を撮影した写真家・星野道夫。その展覧会「星野道夫 悠久の時を旅する」が岡山県立美術館で開催されている。

 星野は1952年千葉県市川市生まれ。19歳のときに目にしたエスキモーの村の空撮写真に惹かれ、村長宛に手紙を書く。20歳の夏休みにアラスカに約3カ月滞在し、帰国後は、写真家になることを決意。慶應義塾大学を卒業後、動物写真家・田中光常の助手を2年間務めた。78年、アラスカ大学野生動物管理学部に入学。以後、アラスカの自然と人々をテーマに写真と文章で記録・発表した。96年8月、カムチャツカ半島で取材中にヒグマに襲われて急逝。アニマ賞・木村伊兵衛写真賞を贈られる。

 本展は、日本にいた20歳の星野が、アラスカのシシュマレフ村村長と交わした手紙をはじめとする貴重な資料を交えて、初めて足を踏み入れたアラスカから、事故で亡くなる直前まで撮影していたロシアのカムチャツカ半島までの写真を一望するもの。未完の作品群によって星野の足跡をたどりながら、その終わりなき旅を紹介する。

 北極圏の大地や、野生動物と共生する人々の暮らし、語り継がれた神話。星野はその鋭敏な感度で生命の輝きをとらえるとともに、数々の出会いを通じて思索を深めながら、「自然と人の関わり」を追い続けた。星野の残した写真と言葉は、没後25年を迎えたいまもなお多くの人々の心を動かし、今日的な課題へと向き合う私たちの背中を優しく押してくれている。