あいちトリエンナーレ2016開幕レポート!【名古屋編】
今年で3回目を迎える「あいちトリエンナーレ2016」が、いよいよ8月11日に開幕する。今年はテーマに「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」を掲げ、38の国と地域から119組のアーティストが参加。名古屋、豊橋、岡崎の街なかに作品が展開されている。注目の作品を名古屋編と岡崎・豊橋編の2回に分けてレポートする。
世界に対峙し、未来へ希望をつなぐ芸術祭
開幕前日の10日に行われた記者会見で、港千尋芸術監督は「予想以上の規模と内容。激動する世界に正面から向き合い、希望を未来につないでいこうとするアーティストたちの真摯な姿勢を、訪れた人と共有できる芸術祭となっている自信がある。幅広い方に見てほしい」と手応えを語った。
大巻伸嗣《Echoes-Infinity》(愛知県美術館)
様々な空間をダイナミックかつ繊細なインスタレーションで変容させてきた大巻伸嗣。愛知県美術館では一辺が15m以上あるホワイトキューブを、顔料の粉を使いステンシルで描かれた花模様で埋め尽くし、圧倒的な色彩の空間を生み出した。また、作品制作の際に出た顔料の粉で満たされた108(この数は偶然のものだという)のグラスにも注目だ。このほか損保ジャパン日本興亜名古屋ビルでは、漆黒の闇の中に浮かび上がるインスタレーション作品《Liminal Air》を見せてくれる。
ジェリー・グレッツィンガー《Jerry's Map》(愛知県美術館)
1963年から20年もの間、落描きとして「想像上の」地図を描き続けてきたジェリー・グレッツィンガー。今回の参加は、港芸術監督がパリでその作品に出会ったことがきっかけになったという。テーマである「虹のキャラヴァンサライ」に合致することから、メインビジュアルにも使われている。現在は3200以上のパネルで作品が成立。会場では実際に地図の上に乗ることもできるので、メインビジュアルに使われている部分を探してみるといった楽しみ方も。
刘 韡(リウ・ウェイ)《緑地》(愛知県美術館)
中国の急激な都市化を体験したリウ・ウェイは、巨大な金属部品や工業製品など都市を構成する素材を大胆に組み合わせ、展示室内に都市を再構成することを試みている。
マーク・マンダース《サイレント・スタジオ》(愛知県美術館)
《サイレント・スタジオ》と題された今回の出品作は、マンダースのスタジオを模したものだ。しかしそこには一見粘土に見えるようなブロンズや木でできた本など、様々な仕掛けが盛り込まれており、必ずしもスタジオの再現ではない、独特の空間となっている。「これまでの作品とそれがつくられる現場を同時に見せたい」という本作。作品の中に深く入り込むような感覚を味わってほしい。
西尾美也+403architecture[dajiba]《パブローブ》(愛知県美術館)
ジョヴァンニ・アンセルモ《星々が1スパン近づくところ》(名古屋市美術館)
1960年代後期の美術運動、アルテ・ポーヴェラを代表する作家のひとり、ジョヴァンニ・アンセルモは、名古屋市美術館で文字を使ったシリーズから新作を発表する。地球の動きを把握して作品を生み出すアンセルモは、南北軸を貫き、光が多く降り注ぐ同館の場所性を強く意識。作品には高さがあるため、その分だけ天空に近づくというコンセプトが込められている。
端聡《液体は熱エネルギーにより気体となり、冷えて液体に戻る。そうあるべきだ。》(旧明治屋栄ビル)
「札幌国際芸術祭2014」でディレクターを務めた端聡は、「水の記憶」や「物質とエネルギー」をテーマに作品を制作してきた。今回は水が強力な光源に滴ることで蒸気が発生し、その蒸気がまた水滴となり降り注ぐという、定量の水が循環し続ける装置としての作品を見せる。
長者町会場にも注目!
そのほか、長者町会場(名古屋市)では、インドネシアのアーティスト・コレクティブ、ルアンルパによるコミュニティ・スペース「ルル学校」や、デザイナーのナガオカケンメイが創設した「D&DEPARTMENT PROJECT」が愛知県内で出会ったモノを紹介する展示など、アートの枠組みを超えた企画が展開されている。
岡崎・豊橋編もお楽しみに!