フランス・ナント歴史博物館が中国政府の検閲にNO。「人間、科学、倫理的価値観を守る」
フランス・ナントにあるナント歴史博物館が、中国当局からの検閲によって現在企画中のチンギス・ハーンとモンゴル帝国の歴史をテーマにした展覧会を延期することを発表。ヨーロッパとアメリカのコレクションから当初の構想に沿った展覧会を24年10月に開催するという。
フランス・ナントにある歴史的建造物「ブルターニュ公爵城」に位置するナント歴史博物館が、中国当局による検閲のため、現在企画中のチンギス・ハーンとモンゴル帝国の歴史をテーマにした展覧会を延期することを発表した。
同館はギリシャのビザンティン・クリスチャン博物館やコロンビアの黄金博物館、スウェーデンの国立歴史博物館、スイスの民族学博物館などの海外の博物館と連携し、様々なコレボレーション展を開催してきた実績を持つ。
この展覧会は、中国・フフホトにある内モンゴル博物館との協働で、チンギス・ハーンの功績に焦点を当てたものとして10月17日に開幕予定だったが、今年10月17日に開催を予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で2021年前半に延期されていた。しかしそこに中国当局が展示内容に対して検閲する姿勢を見せたため、同館はプロジェクトを中止。ヨーロッパとアメリカの美術館コレクションを軸に、当初の構想に沿った展覧会を24年10月に開催することを決定した。
同館館長のベルトラン・ギレは声明文で、企画当初、中国当局からは「チンギス・ハーン」「帝国」「モンゴル語」などの語彙を展覧会から削除するよう命令があり、今年は、展覧会の内容を変更し、テキスト、地図、カタログ、プレスなどすべての制作物のコントロールを求める要請さえあったと訴える。
ギレは、中国からの検閲は「モンゴルの歴史と文化を新しい国家物語の利益のために完全に消滅させることを目的とした偏ったものだ」としつつ、「歴史家や専門家からの助言を受けて、私たちの機関で守る人間的・科学的・倫理的価値観の名のもとに、この制作を中止するという決断を下した」と振り返る。
今年8月末、中国・内モンゴル自治区では小中学校の公用語をモンゴル語から標準中国語に変更する学校改革が行われ、授業ボイコットなど数千人規模の抗議デモが起こっていた。今回の検閲は、中国政府のモンゴル系民族への圧力の強さを物語っている。