EXHIBITIONS

植松永次「庭でみつけた流れ星」

2020.11.14 - 12.19

植松永次 加留多 1986 撮影=来田猛

植松永次 空にキャンディー(部分) 2020 撮影=来田猛

 三重県・伊賀を拠点に制作を行う美術家、植松永次の個展がARTCOURT Galleryで開催される。

 植松は1949年兵庫県生まれ。72年に土の質を確かめることからレリーフをつくり始める。75年より信楽の製陶工場に勤務する傍ら、自らの制作を続け、82年に伊賀市丸柱に住居と仕事場を移し、薪と灯油併用の窯を築く。土の存在そのものを感じさせる立体や、植物や水が陶と融合する作品、空間を意識的に使ったインスタレーションなど、植松の制作は、従来の陶芸の枠におさまらない多様さを見せながら、あくまでも土と火に向き合う透徹した態度に支えられている。

 植松は80年代に、「涸沼・土の光景」展、「土・イメージと形体 1981-1985」展などに参加し、現代美術、現代陶芸の双方において注目を集めて以来、各地の美術館やギャラリーで発表を重ねてきた。初期の活動は「もの派」やアースワークとの関連で語られることもあるが、陶芸や彫刻といった既存のジャンルにとらわれることなく、揺るぎない土の佇まいが静けさと情緒をまとう独自の造形を生み出し続けている。

 生活のなかで感じる風、光、色、音、そのなかに宿る生の息吹を土に託し、自らの手、眼と土との対話から見つけ出されたかたちを火によって留める。作者の自己とそれをとりまく世界が土と火を介して一体となったかのような作品は、人間の身体感覚では測れない時間の流れや空間の奥行きさえ感じさせ、それらを前にするとき、私たちは根源的な何ものかに触れたような驚きと懐かしさを呼び覚まされる。

 ARTCOURT Galleryでの初個展となる本展では、板状のミニマルな形態と鮮やかに変化する色調が印象的な初期作「加留多」(1986)を紹介。また、高さ5メートルの展示壁面を空に見立て、無数の陶のピースを散りばめる新作の大型インスタレーション《空にキャンディー》を展示し、「加留多」シリーズと同じ姿勢、技法に基づきつつ、年月を経た現在の自己と自然、生活と表現の重なりを、そのまま空間に投影する。

 このほか、「土遊び」の身ぶりを思わせる《流れるように》、粉末状の土を型に入れ焼成した《都市》など、計14点の作品を展示。