EXHIBITIONS

川原直人「ヒュプノス」

川原直人 Benefits Supervisor Sleeping 2021 作家スタジオにて © Naoto Kawahara 撮影=髙橋健治 Courtesy of Taka Ishii Gallery

川原直人 Benefits Supervisor Sleeping(部分) 2021 © Naoto Kawahara 撮影=髙橋健治 Courtesy of Taka Ishii Gallery

川原直人「ヒュプノス」(タカ・イシギャラリー、東京、2021)展示風景 撮影=髙橋健治 Courtesy of Taka Ishii Gallery

川原直人「ヒュプノス」(タカ・イシギャラリー、東京、2021)展示風景 撮影=髙橋健治 Courtesy of Taka Ishii Gallery

川原直人「ヒュプノス」(タカ・イシギャラリー、東京、2021)展示風景 撮影=髙橋健治 Courtesy of Taka Ishii Gallery

川原直人「ヒュプノス」(タカ・イシギャラリー、東京、2021)展示風景 撮影=髙橋健治 Courtesy of Taka Ishii Gallery

 ペインターの川原直人が、タカ・イシイギャラリーでは6年ぶりとなる個展「ヒュプノス」を開催。本展では、新作絵画4点を発表する。

 川原は1971年東京都生まれ。現在は東京を拠点に活動。工業デザイナーとして活動後、イタリアのインスティテュート・ロレンツォ・デ・メディチで絵画を学び、身近にある人物や風景などの写真や映画の場面を忠実に再現した写実絵画を描いてきた。近年では、デューラーやバルテュス、クラナッハなどによる古典的作品よりイメージを引用し、モデルを変えて場面を再想定(リ・エンビジョニング)した絵画作品を制作。それら「再想定絵画」のなかで、「Old-masterの主題をくり返し使用することにより既視感を導きだしつつ、現代にも通用するイメージの元型について考える」というテーマを追求し、見る者に提示してきた。

 本展で発表する作品では、イギリスの画家、ルシアン・フロイド(1922〜2011)の作品を引用。これまで古典から近代の画家を中心に作品を引用してきた川原にとって、20世紀に活躍し、自身と同時代を生きた作家の作品を引用することは初の試みとなる。

 本展の主題は、「フロイド特有の暴力的なほどの描写」と、部分的に描かれる「繊細な描写」の相反する要素によって生まれるアンバランスさと調和、そしてそこから「発見される美」について再考察すること。また本展の展覧会タイトル「ヒュプノス」は、古代ギリシア神話に登場する眠りの神の名前に由来している。

 古代において睡眠は「生」よりもむしろ「死」に近く、仮死状態と見做す考えが一般的だった。しかしながら、川原は「眠り」こそ「生」の根源に属すると考え、静かに心身を癒し生気を満たす行為として、神秘性と生命力が混在する静謐な「眠り」という営みを綿密な筆致で描き出す。

 新作の《Benefits Supervisor Sleeping》をはじめとして、ヌードは川原の作品でもっとも多く描かれている題材だが、「もっともシンプルで、ちょっとした陰影やポージングによる筋肉の変化で表情がガラリと変わるのが興味深い」と川原は述べている。今作では、情緒性を一切排して人間の身体を物体として観察することで、さらに表現の可能性を探る。