「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」(東京都庭園美術館)開幕レポート。光をめぐる作品の対話
東京都庭園美術館で鉄とガラスという異なる素材を扱う現代アーティスト、青木野枝と三嶋りつ惠による展覧会「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」が始まった。それぞれの素材や視点から光と空間の新たな可能性を探る独自の作品を展開している。
鉄とガラスという異なる素材を扱う現代アーティスト、青木野枝と三嶋りつ惠。ふたりが東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)を舞台に、それぞれの視点から光と空間の新たな可能性を探る展覧会「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」が開幕した。会期は2025年2月16日まで。
青木は、1980年代初期より鉄を素材に制作を続けている彫刻家。工業用鉄板を溶断し、切り出したパーツを空間に合わせて組み立てる作品は、鉄という重厚な素材を使いながらも、線を描くような軽やかさを持つ点が特徴だ。シンプルな形状の繰り返しや自然の営みを想起させる作品は、新たな彫刻の可能性を切り拓くものとして高く評価されている。
いっぽうの三嶋は、20代後半にイタリアへ渡り、1996年からヴェネチアの工房でガラス職人と協働しながら作品を制作している。無色透明のガラスにこだわり、自然と調和しながら景色を映し出す作品は、彼女の代表的な特徴であり、その建築的なアプローチは空間との共鳴を引き出す点で国際的な評価を得ている。
本展を企画した森千花(東京都庭園美術館 事業係長)によれば、この展覧会は「旧朝香宮邸に新しい息吹を吹き込み、現代という時間を迎え入れる」試みとして企画された。鉄とガラスという、邸内装飾にも多く用いられている素材を扱うふたりの作家の作品を通じて、過去と現在が対話しながら調和する展示が目指されている。
展示監修を務めた建築家の青木淳は、ふたりの共通点について「空間そのものへの感受性の高さ」を挙げており、「展示構成では空間の特性を最大限に活かすことを心がけた」とし、木の床を保護する素材選びや展示室の配置バランスにも細心の注意を払った。これにより、作品と空間が一体となった独自の展示体験が可能となっている。