EXHIBITIONS

藤島武二と猪熊弦一郎展

サンプリシテとシンプル

藤島武二 大王岬に打ち寄せる怒涛 1932 三重県立美術館蔵

 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館は「藤島武二と猪熊弦一郎展 サンプリシテとシンプル」を開催している。東京美術学校で藤島武二(1867〜943)に学んだ猪熊弦一郎(1902〜1993)。独自の歩みを続けた2人の作品を、藤島が「サンプリシテ(単純化)」、猪熊が「単化(または「シンプル」)」と呼び、制作において重視した考え方を通して展観する。

 藤島は、明治・大正・昭和を通じて白馬会や文展、帝展を舞台に活躍し、日本近代洋画を牽引したひとり。洋の東西を融合した華やかな女性像や、晩年の理想の日の出を求めて描いた簡潔な表現の作品で知られている。同時に1896年に東京美術学校西洋画科助教授に就任して以降、多くの若者の指導にあたり、猪熊もその薫陶を受けて画家の道を歩み始めた。

 猪熊は、30代後半での足掛け3年のパリ遊学、50歳を越えてからの約20年におよぶニューヨークでの活動、その後ハワイと東京での制作と、拠点を変えながら描き続けた。その間、具象画から抽象画へと変化し、晩年には具象と抽象の枠を超えた作品を制作している。

 藤島と猪熊の画風は異なるが、ともに重視していたのが「単純化」だった。複雑なものをいかに簡潔に表すか、描こうとしている本質を表すためには何を取り除いて何を残すか、残したものをどのように組み立てて描くかを、2人はつねに考えながら制作に取り組んだ。

 本展では、藤島と猪熊の初期から晩年までの作品を展示。それぞれの方法で「単純化」を推し進めながら描かれた作品を紹介する。