EXHIBITIONS

アーロン・ガーバー=マイコフスカ「Cushion of Air」

2022.03.19 - 05.07

アーロン・ ガーバー=マイコフスカ City Bridge 2021
©️ Aaron Garber-Maikovska, Courtesy of the artist and Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo: Marten Elder

アーロン・ ガーバー=マイコフスカ City Bridge(部分) 2021
©️ Aaron Garber-Maikovska, Courtesy of the artist and Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo: Marten Elder

 BLUM & POE 東京では、ロサンゼルスを拠点とする作家、アーロン・ガーバー=マイコフスカの個展「Cushion of Air」を開催する。

 ガーバー=マイコフスカは1978年、ワシントンD.C.⽣まれ。その作品は、ハマー美術館(ロサンゼルス)、ハーシュホーン博物館と彫刻の庭(ワシントンD.C.)、ロサンゼル・スカウンティ美術館、ペレス美術館(マイアミ)、ウォーカー・アート・センター(ミネアポリス)に所蔵されている。

「Cushion of Air(空気のクッション)」と名づけた本展では、波状のポリプロピレン製のシートの上にインクや⼿製のオイルパステルを重ね、ガーバー=マイコフスカが自身の⾝ぶりを記録し、とらえた絵画を展示する。

 パフォーマティブな動きを⽰唆的に表した今回の作品群を通じて、 ガーバー=マイコフスカは「⼈間の条件」についても⾔及している。さらに、その作品群は、コミュニケーション、対⼈間のつながり、都市のスプロール化、⾝体といった要素を掘り下げている。これにより、作家が初期から取り組んできたタイムベーストなパフォーマンスの動きの符号を残しながらも、 着実に発展させてきた視覚⾔語についてのメモ書き、あるいは物理的記録ともなっている。

 ガーバー=マイコフスカは、「掘り起こす」あるいは「明らかにする」という⾔葉を⽤い、⾃らが進⾏者として関わる、完成形のコンポジションに向かってペイティングを成し遂げていくプロセスについて説明している。その制作の起点となるのは、⾃らの外部に存在する場所だ。そのいっぽうで、⼈間の深層に存在する集合的無意識によって可能になるペインティングのアクションを⽤いることで、⾃⾝の⾝体の内部に存在する「⽂化的瞬間」を投影する⾏為もまた試みている。

 ガーバー=マイコフスカのすべてのペインティングは、同じプロセスから始まる。まず、半透明状のシートの基盤の裏⾯を⽩く塗り、インクを満たした⿊のマーカーを⽤いて表⾯にドローイングを施す。そこで引かれた⿊い線が、作品の主題を設定し、形式的に画中に表現された空間は、時には書き⾔葉、あるいは横顔像のような表象的役割を持つこともある。

 このように描かれた空間の上から、絵具を満たしたコーキングガン、 3Dプリントした絵具チューブの曲線模様のキャップ、⼿製のオイルパステルのブロックを使って様々にマーキングし、機能的にはモールス信号の点や線のように、ポリプロピレンの⽀持体上に絵具の「道」を描いていく。

 またガーバー=マイコフスカは、オイルパステルの透明度を慎重に調整し、コンポジションの内部を露出し、組み⽴てていく。さらには、形式上のコントラストと同時に、それぞれの作品における素材が明らかになる瞬間を⽣み出すために、⾃⾝が「ムービングスルー」と呼ぶ、丁寧に塗られた絵具束を削り取る動きをたびたび行っている。作品が持つ物質性への着⽬を⽰唆するようなこの⾏為は、その制作プロセスとも呼応し、それは、作家の実践のパフォーマンスを軸とする性質をさらに強調している。

 本展では、ガーバー=マイコフスカのペインティング的実践が持つメディウムの特性が、劇場的なパフォーマンスワーク、⾮伝統的な素材、ポストモダンにおける社会的関⼼事と同期的に発⽣する。