熊谷亜莉沙「私はお前に生まれたかった」

　ギャラリー小柳は、熊谷亜莉沙による個展「私はお前に生まれたかった」を開催する。

　熊谷は1991年大阪生まれ、京都在住。2013年に京都造形芸術大学洋画コースを卒業し、15年に同大学大学院総合造形領域を修了。卒業・修了制作展では千住博奨励作品賞や優秀賞など数々の学内賞を受賞し、在学中にはシェル美術賞（2013）、上野の森美術大賞展（2014）に入選した。

　作品制作において、つねに自身のバックグラウンドを出発点としてきた熊谷。国立新美術館で開催された「シェル美術賞 アーティスト・セレクション 2020」では、自他の加害性の象徴として陶器の豹を描いた作品を発表。それから前に進むことを決心した作家は、自らの手でその豹を破壊、本展で発表される《You or I》（2022）として描いた。

　本展では、《You or I》の作品を中心に、すべて新作で構成される。

　熊谷の作品は、富裕と貧困、生と死、愛と憎しみという非合理的で矛盾に満ちた人間のありようや、その表裏一体の感情や姿に焦点を当てている。卓越した写実表現で描かれる不穏な存在感をたたえたその作品は、熊谷のパーソナルな感情や経験、自身の過去と現在に向き合うことで生まれ、個人的な背景を超えた強いエネルギーで鑑賞者の内部に入り込んでいく。

　本展では、鑑賞者に豊潤な想像力を喚起させるテキストが併置され、熊谷の創作に新たな展開を予感させる。