名和晃平からレアンドロ・エルリッヒまで。東京で見られるパブリック・アート5選
公共空間で誰もが鑑賞できるパブリック・アート。そんなパブリック・アートが多数存在する東京で、編集部がおすすめする5つの作品をピックアップして紹介する。
巨大な鹿と歴史的な建築のコントラスト。名和晃平《White deer》(東京ガーデンテラス紀尾井町)
古来からアニミズムや神道などの信仰を支える動物として親しまれてきた鹿。この鹿を3Dスキャンして制作されたのが、名和晃平の《White deer》だ。
《White deer》の高さは6メートル。ネット上で見つけた鹿の剥製がもとになった本作は、2017年のReborn-Art Festivalでも《White Deer(Oshika)》として発表された。背後にある東京都指定有形文化財の赤坂プリンス クラシックハウス(旧グランドプリンスホテル赤坂 旧館)とのコントラストも見事だ。なお、東京ガーデンテラス紀尾井町には本作のほか、大巻伸嗣、青木野枝らによる作品も点在しているので、あわせてチェックしたい。
住所:東京都千代田区紀尾井町1−2
新宿で「愛」を見つめる。ロバート・インディアナ《LOVE》(新宿アイランド)
2018年5月、89歳でこの世を去った巨匠、ロバート・インディアナ。その代表作が、活字体を彫刻にした「LOVE」シリーズだ。
インディアナはアメリカ社会の実像を描くことを使命に、自身の出身州であった「インディアナ」をアーティストネームとして使用。初期作品では交通標識や会社のロゴなどを取り入れ、アメリカを象徴する言葉や数字、記号を使った絵画を制作していたが、66年からはのちに代表作となる彫刻シリーズ「LOVE」の制作をスタートさせた。明快な色彩と活字体で「LOVE」をかたどったこのシリーズは、ニューヨーク、台北、バンクーバーなど世界各地の街角に設置。「Poeple’s Painter(人々のための画家)」として「愛」や「平和」を謳ったこの作家の代表作をいま一度見つめたい。
住所:東京都新宿区西新宿6-5-1
街行く人々を見つめる巨大な「目」。宮下芳子《新宿の目》(新宿駅西口地下広場)
多くの人々が行き交う新宿駅西口の地下広場。ここで半世紀にわたり、人々を見つめてきたのが、宮下芳子による《新宿の目》だ。
同作が制作されたのは1969年。瞳の高さは3.4メートル、横幅は10メートルにもおよぶ大作で、作品の内部には照明が埋め込まれており、瞳の部分が回転する仕様。一時はスバルビル解体に伴う撤去疑惑が起こり、7月には一部が破壊されるという事件が発生するなど、様々に翻弄されてきた作品だ。新宿を長年にわたり見つめ続けてきた巨大な目。今後もこの街のアイコンとして存在し続けることが期待される。
住所:東京都新宿区西新宿1-7-1
都会に「雲」が出現。レアンドロ・エルリッヒ《Cloud》(飯野ビルディング)
金沢21世紀美術館の常設作品《スイミング・プール》や、森美術館での大規模個展「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」、あるいは大地の芸術祭、瀬戸内国際芸術祭などへの参加で知られるレアンドロ ・エルリッヒ。その作品がいつでも見られるのが、霞ヶ関の飯野ビルディングだ。
ここにあるのは、「雲」をガラスに閉じ込めた「Cloud」シリーズのひとつ。これは10枚のガラスを重ねることで、「大海原に浮かぶ自由な雲」を立体的に表現した作品。LEDライトを内蔵しており、昼と夜で異なる表情を見せてくれる。なお飯野ビルディングにはこのほかにレアンドロの《The Pond》なども設置。官庁街のほど近くで現代美術を楽しめるスポットだ。
住所:東京都千代田区内幸町2-1-1
巨大な数理模型が天を指す。杉本博司《SUNDIAL》(大手町プレイス)
2018年、大手町に開業した新街区「大手町プレイス」。そのシンボルとなっているのが、杉本博司による彫刻作品《SUDIAL》だ。
本作は、杉本がこれまでも手がけてきた、三次関数の数式を立体的に表現した数理模型シリーズのひとつ。作品名が記されたプレートには、本作が示す数式も表示されている。なお都内では、オーク表参道のエントランスにも同シリーズの作品が設置されているので、こちらもあわせてチェックしたい(オーク表参道内、金田中は杉本が店舗デザインを手がけている)。
住所:東京都千代田区大手町2-3-1および2
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このほか、都内では六本木ヒルズや東京ミッドタウンなどの複合施設、あるいはパブリック・アートの集積地として知られるファーレ立川など、誰もが無料で現代美術を鑑賞できるスポットが数多くある。美術館やギャラリーとは異なる空間で、作品が街におよぼす影響や意味などを考えつつ、鑑賞してみたい。