2025.2.21

今週末に見たい展覧会ベスト8。「ENCOUNTERS」から「Art Kudan」、岸裕真展まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「ENCOUNTERS」展の展示風景より、藤堂高行《鎖に繋がれた犬のダイナミクス》
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もうすぐ閉幕

「HAPPYな日本美術」(山種美術館

展示風景より、岸連山《花鳥図》(江戸時代、山種美術館)

 日本美術において表現されてきた様々な吉祥の造形。これにフォーカスした展覧会「HAPPYな日本美術ー伊藤若冲から横山大観、川端龍子へー」が、2月24日まで山種美術館で開催されている。レポート記事はこちら

 本展では、長寿や子宝、富や繁栄など、人々の願いが込められた美術に焦点をあて、おなじみの松竹梅や七福神をはじめ、現代の人々にとってもラッキーモテーフといえる作品を紹介。また、ユーモラスな表現、幸福感のある情景など、見る者を楽しく幸せな気持ちにする力を持った作品も展示されている。

 展示は「福をよぶー吉祥のかたち」と「幸せをもたらすーにっこり・ほのぼの・ほんわか」の2章構成。第1章では、2025年の干支でもある巳年にちなんだ蛇をはじめ吉祥をモチーフとした作品が並び、第2章では、ユーモラスな表現や幸福感のある情景を主題とした作品が展覧されている。

会期:2024年12月14日~2025年2月24日
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル) 
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで 
料金:一般 1400円 / 大学生・高校生 500円 / 中学生以下 無料

「歌川国芳展 ―奇才絵師の魔力」(大阪中之島美術館

展示風景より、手前は《大江山酒呑童子》(1851、前期展示)

 大阪中之島美術館で、江戸時代末期に活躍した浮世絵師・歌川国芳(1797~1861)の画業を紹介する大規模な展覧会「歌川国芳展 ―奇才絵師の魔力」が2月24日に閉幕する。レポート記事はこちら

 歌川国芳は、30歳代始めに『水滸伝』の英雄たちを描き、遅咲きの成功を手にした。それと同時に、美人画と役者絵を頂点とする当時の浮世絵界で、武者絵を新たに人気ジャンルへと押し上げた。3枚続きの大画面に大胆に描かれた武者絵、ユーモアや機知に富んだ戯画、西洋画法を取り入れた風景画など、様々に趣向を凝らして新風を吹き込み、豊国(三代)、広重と並ぶ人気絵師となった。

 本展は、大阪では13年ぶりの国芳の大規模な個展。国芳の仕事を「武者絵」「役者絵」「美人画」「風景」「摺物」「動物画」「戯画」「風俗資料」「錦絵」など、ジャンル別に紹介しており、武者絵や戯画をはじめとした幅広い画題の浮世絵版画や貴重な肉筆画など、約400点を楽しむことができる。

会期:2024年12月21日〜2025年2月24日(前期:12月21日~2025年1月19日/後期:1月21日~2月24日)
会場:大阪中之島美術館 4階展示室
住所:大阪府大阪市北区中之島4-3-1
開場時間:10:00~17:00 ※入場は16:30まで
料金:一般 1800円 / 高大生 1500円 / 小中生 500円

「反復と偶然展」(国立工芸館

展示風景より、石田亘《パート・ド・ヴェール蓋物 白寿》(2000)

 金沢の国立工芸館で、「反復」と「偶然」という工芸やデザインを特徴づける2つの性質に注目し、そのコレクションを読み解く展覧会「反復と偶然展」が2月24日まで開催中だ。レポート記事はこちら

 「反復」と「偶然」は一見相反するキーワードであるが、繰り返しの行為から生み出される偶然性を作品に取り入れたり、はたまた偶然性の複製を試みる行為は工芸やデザインの領域においてよく見られるものでもある。

 本展ではそのような視点から、4つのセクションで作品を紹介。「反復」をテーマとした第1室では、編み物やステンシルのように規則的な作業工程から生み出されるものや、同じ図柄を連続させた幾何学模様の絵付けが特徴的な工芸作品など、「偶然」をテーマにした第2室では、自然素材の持つ特徴や、制作の技法・環境などの影響も相まって生み出された作品など、反復と偶然がおりなす工芸とデザインの多様な表現の魅力が紹介されている。

会期:2024年12月17日〜2025年2月24日
会場:国立工芸館
住所:石川県金沢市出羽町3-2 
開館時間:9:30〜17:30 ※入館は閉館30分前まで 
料金:一般 300円 / 大学生 150円 / 高校生以下および18歳未満、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方と付添者(1名) 無料

「ENCOUNTERS」(TODA HALL & CONFERENCE TOKYO)

展示風景より、藤堂高行《鎖に繋がれた犬のダイナミクス》

 文化庁が2011年度より実施している「文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業」の成果発表イベントとして「ENCOUNTERS」が東京・京橋の「TODA HALL」と「 CONFERENCE TOKYO」で2月24日まで開催されている。レポート記事はこちら

 「文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業」とは、文化庁が若手クリエイターの創作活動および発表機会を支援するプログラムだ。各分野に応じた適切な評価・助言ができる識者をアドバイザーとし、採択されたクリエイターが次のステップへと進む機会を提供する。本展はここで採択されたクリエイターが制作中のプロトタイプの展示やデモンストレーション等を実施し、成果を発表するものだ。 

 今回は「ENCOUNTERS」の会場を昨年11月に開業した、「TODA BUILDING」内にある「TODA HALL」と「 CONFERENCE TOKYO」に変更。潤沢な展示スペースを利用し、各作家のデモンストレーションをより体感することができる。

会期:2025年2月15日〜24日
会場:TODA HALL & CONFERENCE TOKYO
住所:東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 4階
開館時間:11:00〜18:00(2月15日、22日、23日は〜19:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
料金:無料

今週開幕

「Art Kudan」(kudan house)

CURATION⇄FAIR Tokyo 2025 展覧会「美しさ、あいまいさ、時と場合に依る」展示風景 撮影=柳原美咲

 2月16日まで東京のkudan houseにて行われた「CURATION⇄FAIR Tokyo」の展覧会。その第2部となるアートフェア「Art Kudan 2025」が、2月22日〜24日に同会場で開催される。

 同フェアでは、kudan houseの4フロアにわたり、古美術から現代美術、工芸まで多岐にわたるジャンルの作品が一堂に会する。参加するのは、国内のアートフェア参加が珍しいロンドンギャラリーや、無人島プロダクションなど、日本のアートシーンを牽引する21のギャラリーだ。 

 第1部の展覧会で、鑑賞者はアートフェアにも出品される多くの作品を楽しみ、事前にその魅力を知ることができた。アートフェアでは、実際に作品を購入することを通じ、「アートをコレクションする喜び」を体験し、「アートの世界に参加する」感覚を味わうことができるだろう。

会期:2025年2月22日〜24日
会場:kudan house
住所:東京都千代田区九段北1-15-9
開館時間:10:00〜18:00 ※最終入場17:30
料金:一般 3500円 / 学生・障がいのある方 2000円 / 千代田区在住・在勤の方 3200円

特別展「武家の正統 片桐石州の茶」(根津美術館

 東京・南青山の根津美術館で、特別展「武家の正統 片桐石州の茶」が2月22日から開催される。

 片桐石州(1605〜73、貞昌、石見守、三叔宗関)は大和国小泉藩第2代藩主であり、武家を中心に広まった茶道・石州流の祖。我利休の実子である千道安(1546〜1607)から茶の湯を学んだ桑山宗仙(1560〜1632、左近)の晩年の弟子で、利休流の侘び茶をもととした。いっぽう江戸の自邸では、武家層を中心に多くの客人を招き、大名らしい厳かな茶会を開催。

 石州の茶は、江戸時代を通して大名や武家に広く浸透し、また江戸城の茶を取り仕切っていた幕府の数寄屋坊主を多数輩出した。本展は、茶道史上に極めて重要な位置を占めながらも、これまで注目されることが少なかった石州と石州流の茶の湯を、没後350年を経て顕彰する初めての機会だ。

会期:2025年2月22日~3月30日
会場:根津美術館
住所:東京都港区南青山6-5-1
電話番号:03-3400-2536
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月、2月25日(2月24日は開館)
料金:一般 1600円 / 学生 1300円

DOUBLE ANNUAL 2025 アニュラスのじゃぶじゃぶ池/omnium-gatherum(国立新美術館

DOUBLE ANNUAL

 国立新美術館で、京都芸術大学と東北芸術工科大学の学生選抜展「DOUBLE ANNUAL 2025 アニュラスのじゃぶじゃぶ池/omnium-gatherum」が2月22日から開催される。

 本展では堤拓也、慶野結香の2名のディレクターと、監修に片岡真実(森美術館館長)を迎える。両校の学部生と院生を対象に、国立新美術館で展開したい作品プランを募集し、今年度は89組の応募者のなかから、ディレクターによる審査を経て11組が選ばれた。

 今回の方向性を示すテーマおよび展覧会タイトルとして「アニュラスのじゃぶじゃぶ池/omnium-gatherum」を設定。ラテン語で有機的な「輪」や「環」を示す「アニュラス」と、公園にある浅い水遊び場である「じゃぶじゃぶ池」、そして混合物、寄せ集め、まぜこぜなどを意味する「omnium-gatherum(オムニウム・ギャザラム)」は、無限の可能性にひらかれた円環状の公共空間に、様々な表現や考え方を持っている人々が集い、混ざりあいながら戯れるイメージをもって名づけられた。

会期:2025年2月22日~3月2日
会場:国立新美術館
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00 ※最終日の観覧受付は閉場の30分前まで
休館日:2月25日
料金:無料

「Oracle Womb」(√K Contemporary

 研究者としてAIに携わり、現在は表現者としてAIとともに芸術を生み出している岸裕真。その個展「Oracle Womb」が東京・新宿区にある√K Contemporaryで開催される。会期は2月22日~3月15日。

 岸はAIを「Alien Intelligence(エイリアンの知性)」ととらえ直し、人間とAIによる創発的な関係「エイリアン的主体」を掲げて、自ら開発したAIと協働して絵画、彫刻、インスタレーションの制作を行う。2023年より、ほぼすべての制作においてオリジナルの対話型AIモデル「MaryGPT」がそのキュレーションを担ってきた。

 本展では地下から2階の3フロアにわたり、インスタレーションから平面作品まで展示され、岸と「MaryGPT」が創り出す「美しい違和感」を展開するという。同展の会場音楽はロサンゼルス出身のプロデューサー兼アーティスト・Teebsが担当。また3月8日には金沢21世紀美術館館長・長谷川祐子をゲストへ迎えた特別なトークイベントも開催予定だ。

会期:2025年2月22日~3月15日
会場:√K Contemporary
住所:東京都新宿区南町6
開館時間:13:00〜19:00
休館日:日月
料金:無料