来館者の経済不安を払拭せよ。ロンドンのナショナル・ギャラリーが取り入れる入場料スキーム「ペイ・ワット・ユー・ウィッシュ」とは?
長引く物価高騰が人々の暮らしに少なからず暗い影を落とすなかで、ロンドンのナショナル・ギャラリーは昨年から新しい取り組みを続けている。曜日と時間限定で、特別展への入場料をビジター自らが決めるというイギリス初の斬新なスキームだ。それは人々への経済的なサポートだけではなく、アートに触れる機会を増やして来館者数増加にもつながっているという。
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© National Gallery, London
今回3回目となる「ペイ・ワット・ユー・ウィッシュ」
ナショナル・ギャラリーは9月30日から来年1月21日まで、17世紀のオランダ絵画を代表する画家「フランス・ハルス」展を開催する。これは同ギャラリーがオランダのアムステルダム国立美術館とドイツのベルリン美術館の絵画館と共同で企画したもので、それぞれのプライベートコレクションにプラスして、他の美術館からリースした作品を展示する。ハルスの過去最大規模の展覧会になる予定だ。スポンサーはナショナル・ギャラリーのパートナーでもある世界的な投資銀行のクレディ・スイスが務めている。
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© Trustees of the Wallace Collection, London
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© Musée du Louvre, Paris, Department of Paintings
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© Rijksmuseum, Amsterdam
このエキシビションの入場料は通常で大人ひとり22ポンド(障碍者20ポンド)、もしくはそこに寄付額をプラスした24ポンド50ペンスの2種類から選ぶようになっている。だが、21時までのレイトナイトオープンを行っている金曜日の17時30分から19時45分までに入場するチケットに限り「ペイ・ワット・ユー・ウィッシュ」が適応される。これは下限1ポンドとしてビジターが自ら支払う金額を決められるスキームだ。前売り券をネットもしくは電話受付で購入する必要がある。
同ギャラリーが「ペイ・ワット・ユー・ウィッシュ」を採用する展覧会は今回で3回目となる。初回は昨年10月1日から今年1月22日まで開催された「ルシアン・フロイド:ニュー・パースペクティブス」(以下「フロイド」展)で、2回目は8月13日まで行われていた「アフター・インプレッショニズム:インヴェンティング・モダン・アート」(以下「モダン・アート」展)だった。
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© National Gallery, London
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© National Galleries of Scotland, Edinburgh