ダニエル・アーシャムはなぜポケモンをアート作品へと変えるのか? 「僕はポケモンとともに育った」
ダニエル・アーシャムとポケモンとのコラボレーションによるアートプロジェクトの第3弾「A Ripple in Time(時の波紋)」がついに始まった。東京の5会場での展覧会にあわせ、『ダニエル・アーシャムのポケモン図鑑』(美術出版社)も刊行。そのなかから、ダニエル・アーシャムのインタビューをお届けする。
ダニエル・アーシャムとポケモンとのコラボレーションによるアートプロジェクトの第3弾「A Ripple in Time(時の波紋)」がついに始まった。東京の5会場での展覧会にあわせ、『ダニエル・アーシャムのポケモン図鑑』(美術出版社)も刊行。そのなかから、ダニエル・アーシャムのインタビューをお届けする。
共鳴し合う創造力から発出した世界―ダニエル・アーシャム インタビュー
2018年、インスタグラムに投稿された一匹のピカチュウ。透明のスーツケース内に鎮座した鈍色のボディに白く際立つ瞳。私たちがよく知る、黄色く愛らしい小さな生き物とはまったく異なる姿をしていた。画像には「またしても刺激的な旅になった、ありがとう東京」というコメントがついている。そしてこの刺激が、ニューヨーク在住のアメリカ人アーティスト、ダニエル・アーシャムと日本発祥のPokémonという、ふたつの異なる創造世界を結びつけるコラボレーションを、牽引していくことになった。
アーシャムは、彫刻、ドローイング、インスタレーション、パフォーマンスなどマルチメディアな表現手段を用いる。なかでも、「フィクションとしての考古学(Fictional Archaeology)」というコンセプトに基づき、カメラやラジカセ、バスケットボールから、ぬいぐるみや人体に至るまで 、あたかも未来の考古学者が発掘したかのような現代文明のかけらとして提示する彫刻作品が代表的だ。洗練された造形で時空を操り、いまだ訪れぬ世界でノスタルジアを醸し出す不思議な感覚を投げかけてくる。
ブランド企業とのコラボレーションも多数手がけるアーシャムは、時代を代表するようなアイテムや商品などポップカルチャーから抽出した物を、別のメディアに置き換えて価値を変換する。その手法は、アンディ・ウォーホル的と言えるかもしれない。また、クーパー・ユニオンで建築を学んだ彼は、商業スペースの設計や大掛かりなインスタレーションなどを行う建築家ユニット、スナーキテクチャーの共同設立者でもあり、今シーズンにはNBAクリーブランドキャバリアーズの芸術監督にも就任するなどその活躍は多岐にわたる。
一方のPokémonは、1996年に発売されたゲームボーイ用ソフト『ポケットモンスター 赤・緑』を原点とし、ゲームのほか、トレーディングカードゲーム、テレビアニメや映画、アプリ、グッズなど幅広いメディア展開をする世界的なコンテンツである。プレイヤー自身が主人公となってポケットモンスター(以下、ポケモン)と呼ばれる不思議な生き物と一緒にストーリーを展開していくロールプレイングゲームは国内外で絶大な人気を獲得し、近年ではAR技術を用いた『ポケモン GO』の爆発的人気が記憶に新しい。またテレビアニメでは、少年のサトシとピカチュウが出会い旅を続けていく冒険物語が描かれている。1996年当時見つかっていたポケモンは151種だったが今では900以上にのぼり、その多様な個性と生態表現から、ポケモン自体に熱狂するファンも多い。
──まず、あなたの作品のメインテーマとなる「フィクションとしての考古学」について、また今回のプロジェクト「Relics of Kanto Through Time」の骨子となるコンセプトやコラボレーションの姿勢について教えてください。