童心と色彩を抱え、魂を込めて世界を描く。MISATO ANDOインタビュー
2023年6月に「楽器を持たないパンクバンド」BiSHのリンリンとしての活動を終え、改名して美術の道に進んだMISATO ANDO。同年10月の初展示の感触、敬愛しているキース・ヘリングの魅力、創作の根源などについて聞いた。
アーティストとしてのキャリアの幕開け
──MISATO ANDOとして初の展示となった、MEET YOUR ART 2023におけるアートフェア「CROSSOVER」はいかがでしたか?
BiSHのリンリンとして活動してきた音楽とは異なる分野での挑戦だったので、怖いと感じることもありました。だからこそ、「いっそ初めてを楽しもう!」と思って挑みました。
出展作品は、自己紹介としての「自画像」にしようと考えていて、「アートの世界、初めまして」の気持ちから《自画像〜珍竹林からこんにちは〜》が生まれました。どういう素材で表現するか試行錯誤しながら、大人になるにつれて外の世界に開かれていって経験というジャングルに入り込んだ自分を、立体物で表現しました。かけた時間に比例するようにできあがったときの達成感もすごかったです。
──「怖い」という言葉がありましたが、BiSH解散と同時にアートの道に舵をきって、まもなく作品のお披露目の機会もあった。そういった行動力には勇敢さを感じています。
今回の展示は、BiSHの頃からコラムやファッションスナップでお仕事させていただいた雑誌『GINZA』のバックアップがあって実現したものでした。ファッションにおける自分の夢を叶った場所の支えがあって、アートという世界で一歩を踏み出すことができたんです。
それに、BiSHはもともと小さなライブハウスでライブをしていて、それが全国のアリーナをめぐって、東京ドームの解散ライブまで駆け抜けていったグループだった。やりたいことは言ってみて、どうにかしてやりきろうとしてきた経験が、自然と自信になっていたのかもしれないですね。
──これまでのファンとは異なる層に向けて発信していく不安などもあったと思いますが、展示の反響はいかがでしたか?
不安……確かにそうですよね、自分のつくったものがいつも好きだから、あんまりネガティブなことは考えたことなかったです(笑)。展示を観てくださった方が自分とは異なる視点で作品への考えを持ってくれるところは、やっぱりアートって面白いなって思いましたね。
今回の作品は、家族が保管してくれていたおもちゃや図工の作品など、私が幼い頃のものもふんだんに使っているので、同世代の人にとっては「昔の記憶が呼び起こされたりする」という感想があったのも印象的でした。遠く離れた場所で育ったのに、作品を通して昔の自分たちが交流するような感覚があって、それが嬉しかったです。