2018.4.6

ベルトラン・ラヴィエが見せる多種多様な「工事現場」とは? エスパス ルイ・ヴィトン東京で個展開催

東京・表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で、アプロプリエーションやレディ・メイド作品で知られるフランス人アーティスト、ベルトラン・ラヴィエの個展「Medley」が開催される。会期は4月19日〜11月4日。

ベルトラン・ラヴィエ EMPRESS OF INDIA II 2005 © Adagp, Paris 2018
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 ベルトラン・ラヴィエは1949年シャティヨン=シュール=セーヌ生まれ。ヴェルサイユの国立高等園芸学校で、彼自身の芸術観に影響を与え続けることになる園芸を学んだ後、1970年代初頭よりアーティスト活動を始めた。

 絵画と彫刻、描写と抽象、生活と芸術の関係を考察するラヴィエのアプローチ。ここには、マルセル・デュシャンのレディ・メイドの精神や、ポップアートの大衆文化的イメージ、既製品などのありふれた要素を用いたヌーヴォー・レアリスムの手法の混合が見られる。1980年代および1990年代のアプロプリエーション(流用)・アート運動に強い影響力を与えたアーティストであるラヴィエは、冷蔵庫やテーブルといった日常的な大量生産製品にペイントを何層も塗り重ねた作品をはじめ、「物」を台座に置いたレディ・メイド作品を発表。本来のコンテクスト(文脈)から隔離された作品群を、ラヴィエは自ら「シャンティエ」(工事現場)と呼ぶ。これは、あえてオブジェを完成したものとみなさず、つねに立ち戻り、再び手を加える可能性を残していることを意味している。

ベルトラン・ラヴィエ ATOMIUM, DETAIL N°10 2007 © Adagp, Paris 2018

 ラヴィエはこれまで4度のヴェネチア・ビエンナーレ(1976、1993、1997、2003)、2度のドクメンタ(1982、1987)への参加をはじめ、世界各国で作品を発表。2012年にはポンピドゥーセンターで大々的な回顧展「Bertrand Lavier depuis 1969」が開催されたほか、近年の展覧会としては、モナコ美術学校での「ベルトラン・ラヴィエ展」(2016)、リヒテンシュタイン美術館での回顧展(2016)、ルツェルン美術館(スイス)での「ウォルト・ディズニー・プロダクションズ展」(2017)などがある。

ベルトラン・ラヴィエ LA BOCCA SUR ZANKER 2005 © Adagp, Paris 2018

 本展は、パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンのアーティスティック・ディレクションのもと、同財団が所蔵するコレクションの中から世界中のエスパス ルイ・ヴィトン(東京、ミュンヘン、北京、ヴェネチア)で未公開の作品を紹介する「Hors-Les-Murs(壁を越えて)」プロジェクトの一環として企画されたもの。

ベルトラン・ラヴィエ WALT DISNEY PRODUCTIONS 1947-2013 N°2 2013 © Adagp, Paris 2018

 会場にはフォンダシオン ルイ・ヴィトン所蔵のコレクションの中から選び出された7点の作品が展示され、「ファン・ゴッホ風」の絵画テクニックによる《Atomium》(2007)をはじめ、レディ・メイドをユーモアと冗談を込めて解釈した《La Bocca sur Zanker》(2005)、ネオンを用いたインスタレーション《Empress of India II》(2005)、アクリル画の《Walt Disney Productions 1947–2013 Nº2》(2013)、《Birka》(2007)、《Paysages Axiois》(2014)、クロムメッキを施した彫刻作品の《Ibo》(2008)が並ぶ。

 これら多種多様な作品を通して、ジャンル、原理原則、素材のミックスを特徴とするラヴィエの実践を堪能したい。

ベルトラン・ラヴィエ IBO 2008 © Adagp, Paris 2018