複層的な視点で新しい美しさをつくりだす。幸田千依の個展「より道の灯」が開催
2017年のVOCA賞を受賞し注目を集める画家・幸田千依の個展「より道の灯」が東京・代官山のLOKO GALLERYで開催される。最新の作品群から、現在に至る視野の変化が読み取れる過去作品群を同時に展示。会期は2018年6月22日〜7月28日。
幸田千依は1983年東京都生まれ。2007年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。国内外各地のレジデンスプログラムへの参加を軸にした活動を経て、2017年にはVOCA賞を
受賞するなど注目を集めている。
幸田が描く景色や人物の多くは、実際に幸田がその目に映してきたものだが、ひとつの画面上にひとつの瞬間だけが描かれるということはなく、多数の視点が1枚の絵画上で統合されている。例えば、かつてプール監視員のアルバイトを務めていたときに目に焼き付いたという、水中を移動する群衆と渦巻きのイメージに、記憶に残った山や森などの別の光景や、政治デモやインターネットといった社会的要素を加えた作品を制作。異なる時空間の複数の視点は、合成されることで新しい美しさや奇妙さを持った、絵画上にしか存在しえない「プール」の光景となる。
本展では、これまで地方でのレジデンスを中心に活動してきた幸田にとっては珍しい「渋谷でのレジデンス」という経験と、そこで遭遇した 「小さな夕方の冒険」をもとに生み出された1枚を含む最新作品、そして現在に至る視野の変化が読み取れる過去作品までが展示される。
印象派やキュビズム、あるいはシュルレアリスムといった近現代絵画の血脈を感じさせつつ、自らの現代的で現在的な「生」を着実に絵画化していくかのような、幸田のダイナミックな作品群を堪能したい。