シルケ・オットー・ナップが個展「スミレ」を開催。次なる舞台空間の可能性に挑んだ、積層の絵画とは
ドイツのアーティスト、シルケ・オットー・ナップの個展「スミレ」が、六本木のタカ・イシイギャラリー 東京で開催される。本展は、同じくドイツの美術家のクルト・シュビッタース(1887〜1948)による劇場コンセプトから構想を得た絵画作品で構成される。会期は9月7日〜10月6日。
シルケ・オットー・ナップは1970年ドイツ・オスナブリュック生まれの美術家。ヒルデスハイム大学で社会学を専攻し、その後ロンドン芸術大学で修士号を取得した。現在はロサンゼルスを拠点に活動を行っている。
これまでロンドン、トロント、コペンハーゲンなどのギャラリーで個展を開催してきたほか、「Sacré 101 – An Exhibition Based on The Rite of Spring」(ミグロ現代美術館、チューリッヒ、2014)、「Made in L.A. 2016: a, the, though, only」(ハマー美術館、ロサンゼルス、2016)といったグループ展や、リバプール・ビエンナーレ 2018「Beautiful world where are you?」や、イスタンブール・ビエンナーレ(2005)などの国際展にも多く参加してきた。
今回、六本木のタカ・イシイギャラリー 東京で開催される個展「スミレ」は、複数のパネルからなる大型絵画作品《Stage(After Schwitters)》と小作品6点で構成される。「スミレ」という展覧会タイトルは、ダダイスムの運動に参加し「メルツ芸術」を提唱したことで知られるドイツのアーティスト、クルト・シュビッタース(1887〜1948)が、31年に出版した詩誌名から取ったものだという。
オットー・ナップは、同誌を出発点として一連の絵画を展開。シュビッタースによる「ノーマルビューネ(=「標準的な舞台」もしくは「ノーマルステージ」)という劇場のコンセプトを参照し、立方体、球、円、階段、長方形、正方形など抽象的な形状を用いながら、奥行きや錯覚を活かした舞台空間の可能性を絵画手法でアプローチしている。
水彩絵具を幾層にも重ねることで描かれる幾何学的なモチーフ。写真のネガのような絵画空間を楽しむと同時に、新たな舞台空間を展望したい。