コンクリート開発史を軸に、ダムや立山信仰のリサーチを通じた新作も。風間サチコの個展が黒部市美術館で開催
ダイナミックな黒一色の木版画で知られるアーティスト、風間サチコ。その個展「コンクリート組曲」が、富山・黒部市美術館で開催される。本展では世界のコンクリート開発史に焦点を当てた作品のほか、黒部近郊のリサーチから生まれた新作も展示。会期は10月12日〜12月22日。
風間サチコは1972年生まれ、96年武蔵野美術学園版画研究科修了。そのダイナミックな黒一色の木版画は、近現代の社会的な事象への関心を起点として、ときにコミカルに現代社会や歴史の直視しがたい現実をとらえている。近年は個展「東京計画2019 vol.2 風間サチコ:バベル」(gallery αM、2019)、「ディスリンピア 2680」(原爆の図丸木美術館、2018)を開催。また、今年はTokyo Contemporary Art Award 2019-2021を受賞した。
そんな風間の個展「コンクリート組曲」が、富山・黒部市美術館で開催される。会期は10月12日~12月22日。
軸となるのは、世界のコンクリート開発史だ。本展では、第一次世界大戦前から高度経済成長期の間に建設された様々なコンクリート建造物と、その歴史を参照した5シリーズを中心に紹介。風間がつくり出す物語と実際の社会的状況が重ねられ、人と自然とコンクリートの壮大な物語世界を見ることができる。
加えて、黒部ダムや立山信仰、戦争遺跡などのリサーチを通した新作も発表。《クロベゴルト》は、ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指輪』の4部作の「序夜」に当たる『ラインの黄金(ラインゴルト)』の物語に、黒部峡谷の発展史を重ねた6点組みの作品だ。
また本展では、ホウ雪崩や隧道事故などで亡くなった黒部ダムの労働者に焦点を当てた新作も展示。壮大なプロジェクトを影で支えた人々を、古代エジプトの遺跡群移設プロジェクトと、ダムに沈んだ村や移住を余儀なくされた人々のエピソードに重ねる。
コンクリート開発史を機軸として、人間がつくり上げた建造物とその歴史を多面的にとらえようとする本展。信仰の地であった立山連峰と黒部ダムなど、コンクリートにまつわる歴史が渦巻く地で見る風間の新境地に期待が高まる。