兵庫県立美術館で「関西の80年代」展が開催。80年代関西アートシーンをいま振り返る
若手作家が次々と挑戦的な作品を発表してアートシーンが盛り上がった1980年代の関西。この時代に焦点を当てた展覧会「兵庫県立美術館開館20周年 関西の80年代」展が開催される。
関西でアートシーンが盛り上がった1980年代に焦点を当てた展覧会「兵庫県立美術館開館20周年 関西の80年代」展が、兵庫県立美術館で開催される。会期は6月18日〜8月21日。
兵庫県立美術館の前身である兵庫県立近代美術館では、かつて、シリーズ展「アート・ナウ」で「関西ニューウェーブ」など当時の動向をいち早く紹介しており、当時の隆盛を間近で見つめてきた館であった。
本展は同館ならではの目線により、80年代の関西のアートシーンの盛り上がりを、プロローグと4章の構成で振り返る展覧会となる。
プロローグでは、展覧会の導入として、ともに美術の伝統的モチーフをあつかっている70年代の奥田善巳《林檎》と80年代の北辻良央《薔薇》の作例を展示。対比的に示すことで、時代による表現の潮流の変化を提示する。
「Ⅰ フレームを超えて」では、禁欲的な傾向から一転し、豊かな色彩やかたちの表現が盛り上がった80年代の作家たちを紹介。変形キャンバスやレリーフ、イラスト的表現など、従来の絵画や彫刻という枠組みを超えた表現が続々とあらわれた。朝比奈逸人、飯田三代、北山善夫、栗岡孝於、辰野登恵子、中谷昭雄、福嶋敬恭らを紹介しつつ、現代の美術表現にもつながる傾向を探る。
「Ⅱ インスタレーション─ニューウェーブの冒険」では、当時の若手作家たちが京阪神の画廊などで作品を精力的に発表するようになった1983~84年以降の動向の紹介をメインに据える。「関西ニューウェーブ」として注目を集めたこの潮流では、空間全体を埋めつくすかのようなインスタレーションが、新たな発表形式として隆盛。これらインスタレーションの再現を行うとともに、関連資料も展示する。展示作家は石原友明、杉山知子、藤浩志、松井智惠など。
「Ⅲ 『私』のリアリティ―イメージ、身体、物語」では、作家たちがインスタレーションから絵画、彫刻、版画といった各自の領域に戻るとともに、表現の内容を深めた80年代後半の動向を振り返る。池垣タダヒコ、河合(田中)美和、川島慶樹、小西祐司、中西圭子、中西學、濱田弘明、原田要、松井紫朗、松尾直樹、三村逸子、森村泰昌、安井寿磨子、山崎亨、吉原英里らの紹介を通して、「私」のイメージ、身体、物語のリアリティを追求した時代をたどる。
「Ⅳ 『私』の延長に」では、80年代終盤の生命力あふれる大作や、ユニット、共同制作による作品を紹介。「私」のリアリティを探求したその先で見えてきた、「私」が生きる世界や芸術の普遍的な問題を視野にいれた作品を紹介。赤松玉女+森村泰昌、KOSUGI+ANDO(小杉美穂子+安藤泰彦)、TRIO(福田新之助、浜本隆司、中澤テルユキ)、田嶋悦子、中原浩大、山部泰司らの作品が展示される。
当時を懐かしむだけではなく、いまなお新鮮な作品の姿を通じて現在の美術のあり方も問い直す展覧会として期待が集まりそうだ。