2023.1.25

理想を追求した表現たち。原美術館ARCで「青空は、太陽の反対側にある」展が開催へ

群馬県の原美術館ARCで、自らの理想を求めて美術的・社会的流行に背を向けた作家の表現に焦点を当てたコレクション展が開催される。会期は、第1期(春夏季)は3月24日〜9月3日、第2期(秋冬季)は9月9日〜2024年1月8日。

奈良美智 Eve of Destruction 2006 カンヴァスにアクリル絵具 117.0x91.0cm ©Yoshitomo Nara
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 群馬県の原美術館ARCは、コレクション展「青空は、太陽の反対側にある」を2期にわたって開催する。同展タイトルは、晴れた日に同館を訪れて出会う空の青は太陽の反対にあるという気づきから付けられたという。会期は、第1期(春夏季)が3月24日〜9月3日、第2期(秋冬季)は9月9日〜2024年1月8日。

原美術館

 原美術館 ARC は、現代美術の専門館で2021年1月に活動を終了した原美術館(東京・品川)と別館ハラミュージアムアーク(群馬・渋川)の活動を集約し、2021年4月に開館した。青い空と深い緑に抱かれた豊かな環境、磯崎新による端正な黒色の建築を特徴としている。

 その「原美術コレクション」は抽象表現主義やポップ・アートから、20世紀美術の巨匠による絵画や彫刻、現在の活躍する作家の写真や映像作品まで、1950年代以降の世界中の現代美術を網羅。さらに、明治の実業家・原六郎(1842−1933)によって近世日本絵画、工芸、中国美術も収集されており、「原六郎コレクション」として現在にも引き継がれている。

鈴木康広 日本列島のベンチ 2014/2021 ミクストメディア ©Yasuhiro Suzuki
撮影=木暮伸也

 そんな同館のコレクションを紹介する本展では、「青空は、太陽の反対側にある」をキーフレーズに、自身の理想を求めて当時の美術的・社会的動向に背を向けた国内外の作家の表現にスポットライトを当てる。

 会場には、既存の価値観に抗ったり視点を変えてメインストリームに疑問を呈すること、あるいは社会を遮って自身の心に深く潜ることで生まれ新たな表現の数々が並ぶという。

ギルバート&ジョージ 成熟 1986 写真 241.3x151.1cm ©Gilbert & George

 第1期(春夏季)の参加作家は、艾未未、安藤正子、イェルク・インメンドルフ、河原温、リー・キット、ギルバート& ジョージ、スラシ・クソンウォン、佐藤時啓、須田悦弘、ルフィーノ・タマヨ、ジャン・デュビュッフェ、奈良美智、ゲ オルク・バゼリッツ、A. R. ペンク、ヨーゼフ・ボイス、張洹、やなぎみわ、ジム・ランビー、ロイ・リキ テンシュタイン、ジャン=ピエール・レイノー。

 第2期(秋冬季)には、カレル・アペル、荒川修作、アルマン、アルマンド、アンディ・ウォーホル、クレス・オルデンバーグ、工藤 哲巳、久保田成子、クリスト、ヴィレム・デ・クーニング、篠原有司男、セザール、アントニ・タピエス、蜷川実花、エルネスト・ネト、森村泰昌、ロバート・メイプルソープ、マーク・ロスコが名を連ねている。

蜷川実花 PLANT A TREE 2011 Cプリント 48.5 x 72.8cm ©mika ninagawa

 また、特別展示室 観海庵には、鎖国の江戸期に西洋絵画や科学に傾倒した司馬江漢や、「朦朧体」と揶揄されながらも墨線を否定し、独自の表現を切り開いた横山大観の作品などを展示。

 さらに「原六郎コレクション」から、通常は東京国立博物館に寄託している《青磁下蕪花瓶》(国宝)と《青磁袴腰香炉》が里帰りする。どちらも爽やかな青空色が美しい名品で、《青磁袴腰香炉》は明治45年以来の一般公開と大変貴重な機会だ。そのほか「光悦本」と呼ばれる希少な古活字本である 『謡本』を初公開するという。

青磁下蕪花瓶 南宋時代 磁器 撮影=上野則宏

 もちろん、アニッシュ・カプーア《虚空》、草間彌生《ミラールーム(かぼちゃ)》、宮島達男《時の連鎖》、奈良美智《My Drawing Room》などの通年展示作品も鑑賞可能。原美術館から移設されたイサムノグチ 《物見台》など4点の屋外作品も併せて楽しみたい。

 原美術館ARCのコレクションを同館ならではの切り口で堪能できる本展。晴れた日にぜひ、足を運んでみてはいかがだろうか。

奈良美智 My Drawing Room 2004/2021 312.0x200.5 x 448.0cm ©Yoshitomo Nara
撮影=木暮伸也