平成29年度の芸術選奨文部科学大臣賞が決定。受賞者に杉戸洋、西野達、椹木野衣ら
平成29年度(第68回)の芸術選奨文部科学大臣賞19名と同新人賞11名が発表された。対象は演劇、映画、音楽、舞踊、文学、美術、放送、大衆芸能、芸術振興、評論等、メディア芸術の11部門。
文化庁は3月7日、美術、音楽、演劇映画など芸術11部門において優れた業績を挙げた、または新生面を開いた人物に対して贈る平成29年度(第68回)の芸術選奨文部科学大臣賞19名と同新人賞11名の受賞者を発表。美術関係ではアーティストの杉戸洋、西野達が「美術」部門大臣賞に、岩崎貴宏が同新人賞に選出、「評論等」では批評家の椹木野衣、美術史家の五十殿(おむか)利治が大臣賞に選ばれた。
杉戸は、東京都美術館で開催された展覧会「杉戸洋 とんぼ と のりしろ」が評価。本展では、絵画とともに常滑焼のタイルで作られた巨大な立体作品、インスタレーションを展示することで、建築空間との対話が試みられた。文化庁は贈呈理由として「絵画の手触りや色彩と近似した感覚的体験を、現実空間の中で具現化することによって空間の絵画化を実現した同展は、絵画の定義の更新を含意するものであり、絵画の新しい可能性を感じさせた」とコメントしている。
公共空間を大胆に変容させるアートプロジェクトを国内外で手がけてきた西野達は、大分県別府市で温泉の「地獄巡り」ならぬ「芸術巡り」を実現した「西野 達 in 別府」をはじめとした各地での作品発表。身の回りのものから抜き出した繊維で鉄塔やクレーンなどの建築物を構築し、自然の風景に見立てた景色をつくり出す岩崎貴宏は第57回ヴェネチア・ビエンナーレの日本館で開催した「逆さにすれば、森」展が評価された。
また、批評家の椹木野衣は「日本美術」と「風土」との関係に迫った『震芸術論』(美術出版社)で大臣賞を受賞。美術館のあり方や作家の作品世界に批評的視点で真摯に向き合い、揺れる大地の上で営まれるこの国の美術を再考する刺激的な論旨が評価された。そして、美術史家の五十殿利治は1930年代の日本の前衛芸術に目を向けた『非常時のモダニズム』(東京大学出版会)で大臣賞を受賞した。
審査員は伊東正伸、小川敦生、尾崎正明、金子賢治、妹島和世、島敦彦、名児耶明、福田美蘭、南雄介、森山明子。推薦委員を青木淳、青木野枝、加藤泰弘、唐澤昌宏、黒川公二、椹木野衣、菅原教夫、住友文彦、立島惠、中野嘉之、中村一美、橋本優子、藤崎圭一郎、真住貴子、森司、山崎剛、山本和弘が務めた。