全国美術館会議が「美術館と美術市場との関係について」声明を発表。「美術館は市場関与目的の活動をすべきでない」
全国389の国公私立美術館が加盟する全国美術館会議(会長:建畠晢)は19日、「美術館と美術市場との関係について」と題した声明を発表した。これは5月に報道された政府案「先進美術館」構想に対するもの。
1952年に創立し、日本全国にある389の国公私立美術館(国立9館、公立246館、私立134館)が加盟する美術館の一大ネットワーク「全国美術館会議」(以下、全美)が、新たな声明文を発表した。
昨年5月25日、第66回全国美術館会議総会で「美術館の原則と美術館関係者の行動指針」を採択し、美術館のあるべき姿を示した11の原則と、それに対応する美術館関係者の11の行動指針が定めたことで注目を集めた全美。19日に公表された「美術館と美術市場との関係について」の声明は、今年5月に読売新聞の報道をきっかけに注目を集めた政府案「先進美術館」構想に反対を示すもの。同構想では、美術館のコレクション売却による市場活性化が謳われており美術館関係者を中心に、大きな波紋を呼んだ(その後、文化庁はこの構想を否定している)。
全美による声明は以下の通り。
美術館はすべての人々に開かれた非営利の社会教育機関である。美術館における作品収集や展覧会などの活動が、結果として美術市場に影響を及ぼすことがありうるとしても、美術館が自ら直接的に市場への関与を目的とした活動を行うべきではない。 美術館による作品収集活動はそれぞれの館が自らの使命として掲げた収集方針に基づいて体系的に行われるべきものである。美術作品を良好な状態で保持、公開し、次世代へと伝えることが美術館に課せられた本来的な役割であり、収集に当たっては投資的な目的とは明確な一線を画さなければならない。 なお、収集活動は購入ばかりではなく寄贈も大きな比重を占めている。将来にわたって美術館が信頼すべき寄贈先と見なされるためにも、この基本方針は重要な意味を持つものである。
上記声明は、前述の「美術館の原則と美術館関係者の行動指針」のうち、コレクション形成・保存に関する原則6と行動指針6に基づくもの。
同原則6では「美術館は、体系的にコレクションを形成し、良好な状態で保存して次世代に引き継ぐ」としており、行動指針6「収集・保存の責務」では「美術館に携わる者は、作品・資料を過去から現在、未来へ橋渡しすることを社会から託された責務として自覚し、収集・保存に取り組む。美術館の定める方針や計画に従い、正当な手続きによって、体系的にコレクションを形成する」ことが定められている。