アート・バーゼルのオンライン・ビューイング・ルームが開幕。コロナ禍や反人種差別に関する作品も登場
世界最大級のアートフェア「アート・バーゼル」のオンライン・ビューイング・ルームが、6月17日に開幕した。コロナ禍や反人種差別の抗議活動を反映した作品を含む、そのハイライトを紹介する。
新型コロナウイルスの影響で開催中止となった世界最大級のアートフェア「アート・バーゼル」。その代替として設立されたオンライン・ビューイング・ルームが、6月17日にスタートした(18日まではVIP、一般会期は19日より。6月26日まで)。
2回目の開催を迎えたアート・バーゼルのオンライン・ビューイング・ルームは、今年3月に予定されていたアート・バーゼル香港の開催中止を受けて設立されたもの。今回は、35の国と地域から282のギャラリーが参加。作品展示のほか、ライブ動画配信によるトークやキュレーターツアー、スタジオツアー、パフォーマンスなどのプログラムも実施されている。
今回のビューイング・ルームについて、アート・バーゼルのグローバル・ディレクター、マーク・シュピーゲルは、「デジタルプラットフォームは、我々の物理的な展覧会が提供する体験を完全に複製することができないが、この困難な時代のなかで、それがギャラリーやアーティストを強力にサポートすることを願っている」とコメントしている。
今回のビューイングでは、コロナ禍を反映した展示や作品も見られる。例えば、ジャック・シャインマン・ギャラリーは「Reach out and touch me」をテーマに、ソーシャル・ディスタンスが求められている時代において、身体の親密さやその力を強調する作品を紹介。ジャべり・コンテンポラリーでは、シムリン・ギルやムリナリーニ・ムケルジーらによる、ロックダウンのなかで自然がふたたび都市空間に戻るというテーマの作品を展示している。
また、世界的に広がっている反人種差別の抗議活動を受け、人種平等や正義をテーマにした様々な作品も取り上げられている。シケマ・ジェンキンス&Co.では、カラ・ウォーカーが2019年に制作した、奴隷貿易や白人至上主義の権力システムを反省する巨大な四連画作品《Fons Americanus》などを紹介。
ヤンシー・リチャードソン・ギャラリーでは、ザネレ・ムホリ、ミカリーン・トーマス、曾廣智(ツェン・クウォンチー)のグループ展を開催。人種、性別、アイデンティティを探究する写真作品を展示している。
メガギャラリーにも注目したい。デイヴィッド・ツヴィルナーは、「Basel Online:15 Rooms」をテーマにグループ展を行い、同ギャラリーに所属している15人のアーティストの作品を展示。同ギャラリーの自社オンライン・プラットフォームでは、それぞれのアーティストと作品の詳細を15のオンライン展示室で紹介している。
同ギャラリーの出品作品の総額は2800万ドル(約30億円)を超えており、オンライン展示での過去最高額を更新。17日のプレビューでは、ヨゼフ・アルバース、キャロル・ボヴェ、ケリー・ジェームス・マーシャル、ジョアン・ミッチェル、オスカー・ムリーリョ、ネオ・ラオホ、ヴォルフガング・ティルマンス、リサ・ユスカヴァーゲなど10人のアーティストの作品を販売し、約1000万ドル(約10億7000万円)の売上を達成した。
またアート・バーゼルのオンライン・ビューイング・ルームに先立ち、同ギャラリーは自社のオンライン・プラットフォームで、ジェフ・クーンズの彫刻作品《Balloon Venus Lespugue(Red)》(2013-19)をその制作過程とともに公開。同作は、800万ドル(約8億5500万円)の価格で販売され、同ギャラリーのオンライン・セールスにおける単体作品の過去最高額を記録した。
日本のTake Ninagawaでは、現在ワタリウム美術館や国立国際美術館で個展を開催している青木陵子やヤン・ヴォーの作品を展示。タカ・イシイギャラリーは、「Abstract Expressionism」をテーマにマリオ・ガルシア・トレス、法貴信也、川井雄仁、村上華子といった抽象表現主義のアーティストの作品を紹介している。
なお会期中には、アーティストのサンフォード・ビガーズとペレス・アート・ミュージアム・マイアミ館長のフランクリン・サーマンスや、セシリア・ビクーニャとハンス・ウルリッヒ・オブリストによるトーク、リッスン・ギャラリーやBlum & Poeによるバーチャルツアー、ダイアン・セヴェリン・グエンによる映画『Tyrant Star』(2019)の上映などのプログラムも行われる。それらもあわせてチェックしたい。