ダ・ヴィンチの《サルバトール・ムンディ》は工房作か。プラド美術館が判断下す
2017年に約4億5000万ドル(約508億円)で落札された、レオナルド・ダ・ヴィンチ作とされる《サルバトール・ムンディ》。プラド美術館は本作をダ・ヴィンチ工房作との判断を下した。
レオナルド・ダ・ヴィンチ作とされ、2017年のクリスティーズにて約4億5000万ドル(約508億円)で落札されて大きな話題を呼んだ《サルバトール・ムンディ》。スペイン・マドリードにあるプラド美術館が、同作を工房作と判断したことが報じられた。
The Art Newspaperによると、2022年1月23日までプラド美術館で開催されている「Leonardo and the copy of the Mona Lisa. New approaches to the artist’s studio practices」展のカタログにおいて、《サルバトール・ムンディ》は「レオナルド作」の絵画リストではなく、「帰属作品、工房、またはレオナルドが許可・監修した作品」というカテゴリーに分類。1900年にロンドン在住のフランシス・クックによって購入されたため、同作は「クック版」と呼ばれている。
同館学芸員のアナ・ゴンザレス・モゾは、カタログのエッセイで「専門家のなかには、(レオナルドの《サルバトール・ムンディ》の)いまでは失われた原型があったと考える人もいれば、議論の多いクック版が原型であると考える人もいる」としながら、レオナルドによる「原型は存在しない」と示唆している。
いっぽう、モゾは《サルバトール・ムンディ》のもうひとつの複製品で1939年にガネー侯爵が購入した、いわゆるガネー版(1505-15)がレオナルドの失われた原画にもっとも近いものだと主張している。カタログにはガネー版の画像が全ページに渡って掲載されているいっぽうで、クック版には図版すらなかった。
今回の展覧会のウェブサイトによると、本展は、ダ・ヴィンチの弟子や信奉者が描いた作品を厳選して展示することで、彼にもっとも近い人物に関する最新の研究結果を公開し、15世紀後半から16世紀初頭のイタリアのアトリエにおける教育方法や絵画制作について分析するものだという。
プラド美術館は、本展は「ルーヴル美術館、ソルボンヌ大学分子考古学研究所、ロンドンのナショナル・ギャラリーなどの国際的な機関と共同で、プラド美術館が並行して実施した野心的な研究プロジェクトの成果だ」としている。