ファーレ立川の岡﨑乾二郎作品、撤去は避けられるのか?
109点ものパブリック・アートが点在するファーレ立川。この一角にある岡﨑乾二郎の作品が撤去の危機にさらされている。
東京都立川市の米軍基地跡地の再開発によって、1994年10月13日に開業した「ファーレ立川」。国内外作家による109点もの作品が点在する、国内屈指のパブリック・アートの集積地として知られる場所だ。この一角、タカシマヤ立川店の裏手にある岡﨑乾二郎の作品《Mount Ida─イーデーの山(少年パリスはまだ羊飼いをしている)》が撤去されようとしている。
この撤去計画は、立川タカシマヤS.C.の改装計画に基づくもの。立川タカシマヤS.C.を所有管理する東神開発株式会社によると、タカシマヤ立川店(百貨店区画)が今年1月31日に閉店するのに伴い、2月以降に撤去が計画されているという。
岡﨑がこの撤去計画を知ったのは2022年6月のこと。詳細な経緯を自身のウェブサイトで明らかにしており、「長い年月をかけて、ひとびとの思いとともに育ってきた文化が、堂々と発表できないような一過的な計画のためにかくも安易に解体撤去されようとしていることを、残念に思い、ひたすら悲しんでいます」とのコメントを寄せている。
本作については、美術評論家連盟が作品保存に対する要望書を清水庄平立川市長と株式会社高島屋の村田善郎代表取締役社長に送付。ファーレ立川を「日本の都市文化の類例のない成功例」としつつ、同作をファーレ立川の核心となる作品と強調。地下駐輪場の換気口を覆うように設置された本作は、立川を語るうえで忘れることができない米軍基地拡張に反対した住民運動「砂川闘争」の歴史を踏まえたもので、次のようなコンセプトが内包されている。「誰にも占拠されない、誰の土地でもない空白を彫刻の内側(この彫刻の中心には換気口という実際の穴もあります、その穴の上に人は立てない)に置いて、そこに人間の手の侵入から逃れた自然、植栽をおき 鳥や動物たちを招く。」(岡崎のテキストより)
美術評論家連盟は、この作品の解体・撤去が「ファーレ立川全体のもっとも重要なコンセプトの核心を損なうことに直結する」と批判。保存を強く求めている。
いっぽう東神開発株式会社は本作の移設などの可能性について、「現在関係者間で協議中ですので、対外的に公表することはございません」との回答を美術手帖に寄せている。
なお美術手帖ではファーレ立川の作家選定から設置までを担ったアートフロントギャラリーに対してもコメントを求めている。回答があり次第追記する。
追記:アートフロントギャラリーより以下の通り回答があった。
「アートフロントギャラリーはこれまで、ファーレ立川アート管理委員会において、作品の維持管理について、作家と作品所有者の間に立って調整する役割を負ってきました。今回についても、両者の折り合いのつく計画を、作家、作品所有者の髙島屋(東神開発)、アート管理委員会とともに会議の場で話し合っていきたいと思います。三者(作家、所有者、管理委員会)による会議を開催したい旨、アート管理委員会より岡﨑事務所にご連絡しており、お返事をお待ちしている状態です」。