2017.1.30

京都で出会う、ヴァン クリーフ&
アーペルと日本工芸の超絶技巧

フランスを代表するハイジュエリーブランドの一つ、ヴァン クリーフ&アーペル。その創立から現代に至るまでのジュエリー作品の流れを概観し、日本の明治に制作された超絶技巧作品と対比させる展覧会「技を極める ヴァン クリーフ&アーペル ハイジュエリーと日本の工芸」が京都国立近代美術館で4月29日から開催される。これに先立ち、東京のフランス大使公邸で記者会見が行われた。

左から、柳原正樹(京都国立近代美術館館長)、ニコラ・ボス(ヴァン クリーフ&アーペル プレジデント兼CEO)、森口邦彦(重要無形文化財「友禅」保持者)、藤本壮介(建築家)、松原龍一(京都国立近代美術館学芸課長)
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 ヴァン クリーフ&アーペルは、日本では明治時代に当たる1906年にパリのヴァンドーム広場で創業。25年のパリ万博で薔薇の花のブレスレットを出展して、大賞を受賞した。その後、「ジップネックレス」や「アルハンブラ ロングネックレス」などを生み出し、世界を代表するハイジュエリーブランドの一つとなっていった。またそのジュエリーは、56年のモナコ大公とグレース・ケリー成婚の際に贈呈され、モナコ公国公式御用達となるなど、数多くのセレブリティに愛用されている。

 同ブランドは、1年に1回、1か国、1都市の1美術館で、ハイジュエリーを中心とした展覧会を開催しており、今年は京都がその会場に選ばれた。

フランス大使公邸で特別展示されたヴァン クリーフ&アーペル《二枚の葉のクリップ》(1967)と服部峻昇《玉虫香合 桐文》(2014) ※ともに本展出品作

 会場となる京都国立近代美術館の柳原正樹館長は、本展開催について「単にハイジュエリーを展示するだけではなく、1200年の京都の歴史で育まれた工芸作品と、ハイジュエリーを組み合わせ、共演するようなかたちに構成しています。見せたいのは、技の世界。技と技の共演。技の結びつきが、新たな次の文化を生むのではないかと期待しています」とコメント。

 友禅や漆芸、七宝など、様々な技術が成熟してきた京都という街で、フランスのハイジュエラーとのコラボレーションを見せる本展だが、「技を極める」というタイトルについて同館学芸課長・松原龍一は、「京都で開催するにあたり、ハイジュエリーを考えるうえで、技の部分から見ていこうとこのテーマを考えた。技を極めた先に、素晴らしいものができあがる。それは日本もフランスも同じ」と、そこに込められた思いを語る。

 本展は3章で構成されており、ヴァン クリーフ&アーペルの歴史を概観する第1章、ヴァン クリーフ&アーペルと日本の工芸の超絶技巧が並ぶ第2章、そして森口邦彦(友禅、人間国宝)ら現代工芸とのコラボレーション作品も展示される第3章から成り立っている。

人間国宝・森口邦彦による《友禅着物 雪舞》(2016) ※本展出品作

 会見に出席したヴァン クリーフ&アーペル プレジデント兼CEOのニコラ・ボスは本展にともない、「私たちはメゾンとして、創設当時から様々なかたちの芸術と交わり、対話をしてきました。また、他の文化との対話も進めてきました。その代表的なものが日本美術との対話です」と同ブランドと日本との関係について言及。

  「20世紀の初め、フランスのアール・デコは日本の文化に影響を受けていました。この日本の文化・モチーフ・スタイルなどは、私たちハイジュエリーの技術者たちが自分のものとし、工房でジュエリーをつくっていったわけです。この対話を、展示・空間を通して、物理的に表現してくださる展覧会になると思います」と本展への期待を語った。

会見に登壇したヴァン クリーフ&アーペル プレジデント兼CEOのニコラ・ボス

なお、本展会場デザインは2013年にロンドンのサーペンタイン・ギャラリー・パビリオンも手がけた建築家・藤本壮介が担当。数年前にニコラCEOとトークイベントを行ったことが縁で、今回の会場構成をすることになったという。会場はロの字型になっており、内部には同ブランドの工房も再現。来場者がジュエリーと工芸により集中できるよう、全体を通して透明なケースが多用され、空気感と奥行きが演出される。藤本は「シンプルさ、奥深さをつくりながらも、ジュエリーと工芸の対比を引き立てるような展示構成にしたい」とその狙いを明かした。

展示デザインについて語る藤本壮介

 240点前後のジュエリーと、80点前後の日本の工芸を展示する本展。異なる系譜で技を極めてきたハイジュエリーと日本工芸の共演に目を凝らしたい。