第29回「世界文化賞」にシリン・ネシャット、エル・アナツイら決まる
絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の各分野で世界的に顕著な業績をあげた芸術家に毎年贈られる「高松宮殿下記念世界文化賞」。その第29回の受賞者が発表された。今年の受賞者はシリン・ネシャット(絵画)ら5名。
高松宮殿下記念世界文化賞は1988年に発足。絵画、彫刻、建築、音楽、演劇/映像の各部門で優れた業績を上げた芸術家を毎年顕彰するもの。世界各国の国際顧問(日本は中曽根康弘)のもとに受賞者推薦委員会を設置し、各委員会が全世界の芸術家・団体を対象に調査を行い、受賞候補者の推薦リストを日本美術協会に提出。日本美術協会が設置する選考委員会において選考される。これまでデイヴィッド・ホックニーやサイ・トゥオンブリー、草間彌生、シンディ・シャーマンなど、5部門で29ヶ国、149組のアーティストが受賞してきた。
今年、選考委員を世界文化賞を受賞したのは、シリン・ネシャット(絵画)、エル・アナツイ(彫刻)、ラファエル・モネオ(建築)、ユッスー・ンドゥール(音楽)、ミハイル・バリシニコフ(演劇・映像)の5名。
絵画部門を受賞したシリン・ネシャットは1957年イラン生まれ。75年にアメリカに移住し、現在もニューヨークを拠点に活動している。写真、ビデオ・インスタレーション、映画など様々な表現方法によって現代イスラム社会を生きる女性たちに焦点を当ててきたネシャット。写真シリーズ「アラーの女たち」や「ヴェールを脱ぐ」などで広く知られ、イスラム女性の政治的、社会的、心理的に抑圧された状況を描写。2005年に第6回ヒロシマ賞を、09年には映画『男のいない女たち』で第66回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞するなど、その活動は国際的に評価されている。
また、彫刻部門のエル・アナツイは1944年ガーナ生まれ。80年以降、ナイジェリアの伝統的な装飾文様に影響を受けた作品を制作。2000年以降は、金属製のボトルキャップを銅線で編み上げた作品で知られており、20〜40人のアシスタントとともに制作している。「アートは環境から生まれるもの」を持論に、15年の第56回ヴェネチア・ビエンナーレで栄誉金獅子賞を受賞。日本では10〜11年にかけ、国立民俗学博物館、神奈川県立近代美術館 葉山などで大規模個展「エル・アナツイのアフリカ アートと文化をめぐる旅」を行っている。
今年の授賞式は10月18日に、常陸宮・同妃両殿下出席のもと明治記念館で開催。各受賞者には金メダルと1500万円が授与される。
なお、97年に創立され、毎年世界文化賞と同時に発表される「若手芸術家奨励制度」はレバノンのズゥカック劇団・文化協会が受賞。パレスチナ、シリア、スーダン、イラクなどの難民を対象に、演劇を通した支援活動を続けてきた成果が評価された。