「心斎橋PARCO」がオープン。アートファンなら足を運びたくなる文化発信地が大阪に誕生
11月20日、全国で18店舗目のPARCOとなる「心斎橋PARCO」がオープン。同店はパルコにとって約9年ぶりの大阪・心斎橋への出店となり、「新生 渋谷PARCO」「名古屋PARCO」と並ぶ東名阪の基幹店に位置づけられる店舗だ。渋谷に続き、この心斎橋PARCOでも注目したいアート要素が目白押しとなっている。
11月20日、全国で18店舗目のPARCOとなる「心斎橋PARCO」がオープン。同店はパルコにとって約9年ぶりの大阪・心斎橋への出店となり、「新生 渋谷PARCO」「名古屋PARCO」と並ぶ、東名阪の基幹店に位置づけられる店舗だ。
心斎橋PARCOが掲げるのは「モノ」「コト」「アート/カルチャー」「テクノロジー」の4つのテーマで、それぞれを組み合わせながら、コロナ禍においてあるべき百貨店の姿を提案している。オープンに際して、このうちの「アート/カルチャー」に注目しながら見どころをピックアップして紹介する。
日本人アーティストの才能が共演。「PARCO EVENT HALL」
かつての大丸心斎橋劇場と大丸心斎橋イベントホールを継承した14階フロアには、ふたつの大型イベントスペースが登場。そのひとつが後者を継承した「PARCO EVENT HALL」だ。
こけら落としとなるのが、渋谷の現代アートギャラリー・NANZUKAがキュレーションする現代美術のグループ展「JP POP UNDERGROUND」(11月20日〜12月6日)だ。昨年ニューヨークとロサンゼルスを巡回した「TOKYO POP UNDERGROUND」と、今年7月に渋谷PARCOで開催された「GLOBAL POP UNDERGROUND」のコンセプトを踏襲した同展。日本固有の歴史的な背景を引用しながら、「芸術のための芸術」という枠の外にいる日本人アーティストの文脈をひも解く。
参加アーティストは、三嶋章義、空山基、Haroshi、山口はるみ、鬼海弘雄、佃弘樹、田名網敬一、佐藤貢一、谷口真人、森雅人、木村充伯、大平龍一、中村哲也、黒川知希、佐伯俊男、YOSHIROTTEN。
140坪ほどの広大な空間には、森雅人や空山基の迫力ある大型作品をはじめ、10月に逝去した鬼海弘雄の写真や、田名網敬一の立体作品など、アートファンなら実物を目にしたくなるバリエーション豊かな作品が揃う。
MR.BRAINWASHの初の大規模個展を開催。「SPACE14」
いっぽう、大丸心斎橋劇場を継承した「SPACE14」のこけら落としは、ポップ・ストリートアーティストとして世界各国で活躍するMR.BRAINWASHの日本初の大規模展覧会「MR.BRAINWASH EXHIBITION "LIFE IS BEAUTIFUL"」(11月20日〜12月6日)だ。
MR.BRAINWASHはフランス生まれで、1980年代にロサンゼルスへ移住。2007年より映像作家として活動を始めた。バンクシーの初監督映画であり、アカデミー賞にもノミネートされたドキュメンタリー『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』(2010)への出演をきっかけにアーティスト活動を開始した。
本展では約80点の作品を展示。ポップ・アートの大衆的・消費的文化を取り込みながら、バンクシー作品や様々な名画のオマージュをストリートの文脈で解釈して展開。絵画から立体まで幅広い作品が展示販売されており、その発想の豊かさを感じることができるだろう。
TOM OF FINLANDが描いたゲイ・カルチャー黎明期。「10階イベントスペース」
10階のイベントスペースではTOM OF FINLANDの日本初個展「Reality&Fantasy The World of Tom of Finland」(11月20日〜12月7日)が東京・渋谷に次いで開催されている。
TOM OF FINLAND(1920〜1991)は、フィンランド出身のアーティスト。ゲイを描いた作品を制作するとともに、LGBTの人々の権利と、社会における受容を目指した社会運動も展開した。生涯で残したドローイングは3500点を超え、ニューヨーク近代美術館や、アート・インスティテュート・シカゴ、ロサンゼルス・カウンティ美術館、ヘルシンキ現代美術館などに収蔵されている。
本展は、1946年から1989年までのあいだに制作された30点の作品で構成。エロティックかつ官能的に描かれた男性の身体からは、当時の社会におけるゲイの男性に押しつけられていたイメージを払拭しようという強い意志が感じられる。
会場では作品のみならず、TOM OF FINLANDのインタビュー映像の上映や、書籍、さらに作品がプリントされたTシャツやグッズも販売。自由と社会の寛容をうながした作家の多様なアートワークを手に入れることが可能だ。
新しいかたちのシェアオフィス×ギャラリー。「SkiiMa」
パルコにとって初の試みとなるのが、コミュニティ型ワーキングスペース「SkiiMa」だ。このスペースの最大の特徴は、ギャラリーが併設されていること。ビジネスの場とアートを近づけることで、新たな発想やアイデアが浮かんでくることを目指す。
このギャラリースペースの第1弾企画が、編集事務所・editorial studio MUESUMと「OIL by 美術手帖」がプロデュースした展覧会「WALKEDIT」だ。
大阪の詩人・辺口芳典が立ち上げた「WALKEDIT」は、様々なつくり手やアーティストとともに、目的地を時間も決めず「ただ歩くこと」を行い、その先の「ものをつくる行為や表現」について考えるプロジェクト/ブランド。
本展の「WALKEDIT」には、辺口とともに写真家の赤鹿麻耶、ファブリックの監修を行うfabricscape、グラフィックデザイナーの黒崎厚志が参加。作家同士がさまざまなかたちでコラボレーション、対話を重ねた道筋が、ギャラリーの空間に作品としてかたちづくられた。
辺口によれば、4人の「歩くこと」を通じて対話を経て完成したこの展示は、直前まで流動的にプランが変わるほど、密な対話を重ねてつくられたという。心斎橋という土地をハブに、それぞれの作家が自身と向き合いつつ「なにか」を生みだそうとした、その過程を現地で体感したい。
関西初上陸のスタジオ。「2G OSAKA」
国内外で人気を集めるギャラリー・NANZUKA、小木”POGGY"基史とデイトナ・インターナショナルによる「コンセプトショップ」、そして人気フィギュアを生み出してきたMEDICOM TOYの3者がコラボレーションした「2G」。その初の関西店舗が2階にある「2G OSAKA」だ。
内装デザインには渋谷PARCOの「2G TOKYO」と同じく、Snarkitectureを起用。渋谷のミヤシタパークにオープンした「KITH TOKYO」の内装も手掛けた彼らによる金庫をイメージした店舗には、第1弾として空山基の作品が展示されている。また、「2G OSAKA」独自となる金色のロゴマークも目を引く。
アーティストとコラボレーションしたBE@RBRICKや、2Gロゴが入ったアパレルなど、多彩なアートグッズが並ぶ、見逃せない店舗だ。
オリジナルソフビ人形を中心に展開。「W by SECRETBASE」
「POP CULTURE SHINSAIBASHI」がテーマとなっている6階。なかでも巨大なハンバーガーのオブジェが目を引く「W by SECRETBASE」は、遊び心が詰まったトイを日本でつくり販売してきた「SECRETBASE」の全国初業態として注目が集まる。
同店では、ヴィンテージ・トイが中心となっていた東京の店舗とは異なり、「鉄腕アトム」や「マジンガーZ」といった日本のアニメやマンガのキャラクターをモチーフにした、どこか懐かしい日本製のオリジナルソフビ人形が並ぶ。
海外でも人気を集めるSECRETBASEのソフビ人形シリーズは数に限りがあるので、ウェブサイトの情報をチェックしながらこまめに店舗に足を運びたいところだ。
地下にはゴジラ像も登場。「ゴジラ・ストア Osaka」
「ゴジラ」の公式フラッグシップは、6階にオープン。日本で2番目の東宝による公式ゴジラ専門ショップだ。
ゴジラ関連の幅広い商品を揃えるのはもちろん、「ゴジラ・ストア」の限定商品に加え、「ゴジラ・ストアOsaka」でしか手に入らないグッズも展開。店頭では、平成のゴジラの像が来館者を出迎えてくれる。
なお、地下1階の地下鉄改札口には、ゴジラ像も設置。モデルとなっているのは、『ゴジラの逆襲』(1955)で大阪に上陸したゴジラで、東宝映像美術班が手がけた迫力の造形を見ることができる。
大阪ならではの巨大モデルが登場。「レゴ®ストア」
6階には、デンマークで生まれ、世界中で親しまれているレゴ®のブランドストアもオープン。
商品を豊富なラインナップで取り揃えるだけでなく、大阪ならではのオリジナル巨大モデルにも注目。世界で21人(2020年10月現在)しかいないという、レゴ®社認定のプロビルダー・三井淳平の手による40分の1スケールの通天閣、および道頓堀を再現した光るモザイクアートは圧巻。
さらに通天閣に設置されたものが有名なビリケンを再現した巨大レゴブロックや、ベンチに座る陽気な服装の中年男性など、ここでしか見られない作品が設置され、目を楽しませてくれる。
館内空間のアートにも注目
心斎橋PARCOでは、店内に設置された様々なアートにも注目したい。
まずはなんと言っても、14階PARCO EVENT HALLのこけら落としとなる展覧会「JP POP UNDERGROUND」の開催を記念して12階と13階にまたがる吹き抜けに特別展示されている、空山基の7メートルの立体作品《Sexy Robot_infiniti floating》(2020)だろう。今年7月に渋谷PARCOにも登場し、大きな話題となった本作品は、館内の吹き抜けから天井に向かって飛び上がるように設置されたことで、より強いインパクトを与える。なお、展示期間は1月中旬まで(状況により変更の可能性あり)となっているので、見逃さないようにしたい。
また、地下2階と13階には、五十嵐威暢がデザインしたパルコのネオンサインの「A」と「O」が展示。1981年に渋谷PARCO・パート3に展示されたもので、恒久的に展示される。
5階の内装は、アートディレクターでありアーティストの菊池あかねが務めている。様々な組木を「大阪の景色」や「気配」に見立て、色鮮やかな世界を表現。壁面や天井にグラフィカルな導線が出現した。
さらに1階の壁面には「SPACE 14」で個展を開催しているMR.BRAINWASHの作品を展示。また、9階ではアーティスト・黒田征太郎がライブペイントをしたアートウォールが展示されている。
過去の歴史を引き継いだアートから、初めて紹介される最新のアートまでが交錯する心斎橋PARCO。東京の渋谷PARCOに続き、大阪における新たなアートと文化の発信地になることは間違いないだろう。