THE LOOP GALLERYで土井沙織の個展が開催中。作品制作を通してボーダーレスな価値観を考える
東京・虎ノ門にあるTHE LOOP GALLERYで、土井沙織の個展「門は開かれたり」が開催中。古代エジプトの壁画を想起させる生物たちが描かれ、神秘的な空気が漂う新作の絵画が展示されている。会期は11月15日まで。
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今年5月に東京・虎ノ門にオープンしたTHE LOOP GALLERYで、土井沙織の個展「門は開かれたり」が11月15日まで開催されている。
土井は愛知県生まれ。神奈川と東京で育ち、2010年に東北芸術工科大学大学院芸術文化専攻日本画領域を修了。現在は山形を拠点に制作活動している。岩絵具や建築資材、顔料を使って土のような質感で描かれた生物たちは、顔や足が横を向き、体が正面を向く特徴から古代エジプトの壁画を想起させる。また、レンガのような厚みのあるパネルも、作品により土俗的なイメージを持たせている。
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土井にとって、作品制作は人知を超える大きな存在を感じるための方法であり、祈り・まじないの類に近い儀式という。モチーフとして登場する、人間と動物の中間ともとれる生物は、誰しもが子供の頃に持っていたようなピュアでありながらもどこか残酷な感情に焦点を当てた存在であり、人間とその他の生物との共生の象徴でもあるのだ。
本展では、古くから日本に存在する「天の羽衣」という伝説をもとに制作された《ハゴロモ》を展示。猟師が山中で水浴びをする天女に出会い、その美しさのあまり天女の羽衣を奪い、天に帰れなくすることで自分の嫁にしてしまうというストーリーのなかで、天女は終始純粋で弱く従順な存在として描かれている。それに対して土井の作品では、天女が「私と居たいなら、あなたが姿を変えてついて来なさい!」と言わんばかりに、猟師ごと羽衣で巻き込んで天に昇っていくシーンが描かれている。
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土井は作品制作の過程を通して、現代を生きる女性の視点から「現代の『天の羽衣』」を再考し、伝説に新たな結末を与えている。このユニークな表現からは、土井の作品に通底するボーダーレスな価値観を見出だすことができる。
戦争や差別など、正論だけでは解決することが難しい問題ばかりの現代社会において、土井の作品は、私たち人間がときには愚かであり、ときには愛すべき存在であることを改めて思い出させる。どこか崇高な空気を纏っており、鑑賞者を神秘の世界へ誘うような作品をぜひ会場で堪能してほしい。
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