チームラボが50万平米の庭園で見せるひとつの集大成!
かみさまがすまう森のアート展
チームラボが7月14日より、佐賀県武雄市にある50万平米の大庭園「御船山楽園」で「資生堂 presents チームラボ かみさまがすまう森のアート展」をスタートさせた。「自然が自然のままアートになる」全14作品を展示した本展。チームラボ代表の猪子寿之と資生堂社長・魚谷雅彦がその見どころと狙いを語る。
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会場は50万平米の庭
「資生堂 presents チームラボ かみさまがすまう森のアート展」は、佐賀県武雄市の「御船山楽園」を会場にチームラボが14のデジタル・アートを展示するもの。チームラボは2014年に国内初の大規模個展「チームラボと佐賀 巡る!巡り巡って巡る展」を佐賀で開催した経緯があり、またここ御船山楽園では15年と16年の過去2回、作品を展示してきた。
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この御船山楽園は172年前、江戸後期の1845年に50万平米にも及ぶ敷地に創られた庭園だ。敷地の境界線上には、日本の巨木第7位に位置する、樹齢3000年以上の武雄神社の神木である大楠があり、庭園の中心には樹齢300年の大楠がある。庭園と森との境界は曖昧で、森には稲荷大明神や、名僧・行基が約1300年前に岩壁に直接彫ったと伝えられる仏や、五百羅漢なども見ることができる。
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園内に設置されている作品はどれも大規模なものばかり。稲荷大明神にある高さ3メートル以上の巨岩に滝をプロジェクションした《かみさまの御前なる岩に憑依する滝》(2017)をはじめ、池の水面に投影された魚が自律的に動き、作品を描き出す《小舟と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング》(2017)、禅における書画のひとつ「円相」を巨岩にプロジェクションした《岩割もみじと円相》(2017)、5万本のツツジがライトアップされ、自律的に強く輝いたり消えたりする《呼応するツツジ谷》(2017)など、インラタクティブな作品が並ぶ。
また、来場者がその場で描いた様々な生きものたちによって、ひとつの生態系が出現する《グラフィティネイチャー - 廃墟の湯屋に住む生き物たち》(2017)といった参加型の作品もある。
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御船山楽園に一歩足を踏み入れれば、雄大な自然がそこにはある。チームラボ代表の猪子寿之は「長い自然と人の営みの連続性の上に自分があると感じられる場所。できれば地図を投げ捨てて、森と庭園の境界をさまよってほしい。そのなかでふとアートに出会ってほしい」と話す。地図なしでは迷ってしまうほど広大な庭園だからこそ、さまようという醍醐味も味わえる。
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資生堂とチームラボがコラボレーション
本展では資生堂とのコラボレーションによって生まれた作品《WASO Tea House - 小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々》(2017)にも注目だ。展覧会の協賛としても参加している資生堂は、言わずと知れた日本を代表する化粧品メーカー。同社社長・魚谷雅彦は今回のコラボレーションについてこう話す。
「資生堂は140年以上にわたり美を追求してきた会社。美とアートのつながりは非常に強い。最初に会場となる御船山楽園の写真を見せてもらったとき、まさに資生堂の名前の由来である『万物資生』だと思ったのです。私たちは化粧品を製造して販売するという事業をやっていますが、その事業の先にあるもの、社会に対してどう価値を提供していくかという意味では、猪子さんがやっておられることと非常に近い。今回のコラボレーションは資生堂にとって的を射たもの」。
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《WASO Tea House - 小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々》は、資生堂が世界88の国と地域で展開するブランド「SHISEIDO」が、2017年7月にアメリカとアジアの一部で若年層を対象に発売する新スキンケアライン「WASO」の名を冠した作品。茶碗に茶を入れると、そこに花々が生まれ咲き、茶碗を手に取って動かすと、花は散り、花びらは茶碗の外へと広がっていくというインラタクティブなものだ。
魚谷はこの作品、あるいは展覧会全体に対する思いとして「(資生堂は)伝統ある企業だけど、面白いこともやる会社だと世界中、あるいは社員にも思ってもらいたい。私たち自身、事業のなかでデジタルは欠かせない存在。今回の展覧会でデジタルを身近に感じ、刺激を受けることでアウトプットに感性の高いものが出てくる。他社よりも高い感性を持つこと、それが世界で勝つための競争戦略だと思っています」と語る。
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チームラボはなぜ自然をアートにするのか?
チームラボはこれまで「Digitized Nature」、つまりデジタル・アートで「自然が自然のままアートになる」という作品を数々手がけてきた。そして今回の展覧会は、その集大成として位置付けられている。ではなぜ彼らは「自然が自然のままアートになる」ことを目指すのか。
その理由について猪子は次のように話す。「人間は、自分が長い年月の営みの上にあることをあまりにも知覚できない。科学として習ったから分かってはいるけど、意識として持ちにくい。自然というのは、その長い年月をそのままかたちとして体現しているもので、そのかたちをいじらずに作品にすることで、『生命の連続性』というものをより強く感じてほしいんです」。
この言葉の通り、本展で展示されている作品は、どれももとからある岩や木、池の姿に一切の変更を加えることなく、作品化している。長きにわたってそこに存在してきた自然とデジタルとのコラボレーションは、チームラボだからこそできるものだろう。
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2016年にはお台場で開催された「DMM.プラネッツ Art by teamLab」は、CNNが「2016's most visually inspiring moments」(2016年のもっとも視覚的に刺激的な瞬間)に選ぶなど、国内外で大きな注目を集めたチームラボ。そして今回の巨大空間を生かした個展を経て、チームラボはいったいどこへ向かうのか。猪子はこう宣言する。「どこまでも行くよ」。