平山郁夫は何を遺したのか? いまあらためてたどる、シルクロードの旅
平山郁夫シルクロード美術館で開館20周年記念展が開催中。画壇デビュー作《仏教伝来》と、その翌年に描かれた《天山南路 夜》の初期代表作が並んで展示されている。2作が揃ってみられる貴重な機会とともに、改めて平山郁夫の軌跡と遺されたものの意義を考える(写真の無断転載を禁じます)。
平山郁夫シルクロード美術館は、戦後日本を代表する日本画家・平山郁夫(1930〜2009)が、シルクロードへの旅と、その文化保護活動において収集した文化財およそ1万点を収蔵し、展示する美術館だ。それらは、仏像のはじまりからシルクロードを経て、各土地で制法、表現ともに変化しながら日本まで伝わった様子を見せてくれる。甲斐小泉駅のそば、八ヶ岳と富士山を望む高原に2004年に建てられた建築は、グッドデザイン賞も受賞し、話題になった。同館の20周年を記念して、「平山郁夫―仏教伝来と旅の軌跡」展が開催されている。佐久市立近代美術館と尾道(生口島瀬田町)にある平山郁夫美術館の協力のもと、画壇デビュー作となった《仏教伝来》をはじめ、彼の初期代表作を揃え、所蔵コレクションとともに平山の画業とその活動の軌跡を追う。
広島に生まれた平山郁夫は、15歳のときに原子爆弾の投下により被爆した。その体験は、平和への願いに貫かれた生涯の原点となる。
戦後は画家を目指して上京。1952年に東京美術学校(現・東京藝術大学)を卒業して、翌年院展に初入選し、59年に《仏教伝来》を発表して画壇にデビューする。仏伝をテーマとした作品を生み出すなかで、彼の関心は玄奘三蔵の足跡へと向かった。自らシルクロードをたどり、その体験を作品にして、“シルクロードの画家”として知られるようになる。同時に争いの絶えない彼の地において、その文化遺産を戦火や災害から守るべく、文化財保護活動を積極的に展開したことでも知られる。その活動は日本のみならず、世界的にも高く評価されている。