24年ぶりの来日! ブリューゲルの傑作《バベルの塔》が東京にやってきた
ブリューゲル1世(1526 / 30〜1569)の名作、《バベルの塔》(1568頃)が24年ぶりに来日、「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』」展が4月18日より東京都美術館で開催される。
オランダ屈指の美術館から約90作品が来日
現存する油彩画の数、わずか25点という16世紀ネーデルラントを代表する画家、ヒエロニムス・ボス(1450~1516)。そして現存する油彩画は、わずか40点あまりという同じく16世紀ネーデルラント絵画を代表する巨匠、ピーテル・ブリューゲル1世(1526 / 30〜1569)。
この2人の作品に焦点を当てて構成されているのが、「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』」展だ。本展は、「16世紀ネーデルラントの彫刻」「信仰に仕えて」「ホラント地方の美術」「新たな画題へ」「奇想の画家ヒエロニムス・ボス」「ボスのように描く」「ブリューゲルの版画」、そして「『バベルの塔』へ」の8章で構成。オランダを代表する美術館のひとつである、1849年創立のボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館から、油彩、彫刻、版画が約90点出品されている。
2人の巨匠、ボスとブリューゲル
なかでも見どころとなるのが、ボスの《放浪者(行商人)》(1500頃)《聖クリストフォロス》(1500頃)と、ブリューゲルの《バベルの塔》(1568頃)だ。
謎めいたモンスターや背景、市井の人々への鋭いまなざしで、独自の世界を築いたヒエロニムス・ボス。その作品は、同時代人だけでなく、ブリューゲルにも大きな影響を与えたことで知られている。本展では、ボスの傑作とされている《放浪者(行商人)》と《聖クリストフォロス》の2点が初来日する。誘惑に惑いつつ、人生の選択に迷う男を描いた《放浪者(行商人)》。そして巨人レプロブスを題材に、モンスターをはじめとする寓意性をもつモチーフを散りばめた《聖クリストフォロス》。この2点は、ボスの出身国であるオランダが持つただ2つのボス作品であり、貴重な展示機会となる。
また、本展タイトルにも冠されたブリューゲル《バベルの塔》は、言うまでもなく展覧会最大の目玉だ。「ノアの箱船」で知られるノアの子孫が、天まで届く高さの塔を建てようとするも、神の怒りを買い、それまで同じ言語で話していた人々に異なる言葉を話させ、塔の建設を中断させた、というストーリーはあまりにも有名である。ブリューゲル以前にも「バベルの塔」はさまざまに描かれていたが、ブリューゲルの描いた塔は、それまでのこじんまりとしたものではなかった。
パノラマを背景にした巨大な塔を画面いっぱいに描き、壮大なスケールで表現したブリューゲル。縦59.9×横74.6センチというサイズにもかかわらず、当時の建築技法の正確な描写や塔を取り巻く情景など、細部にわたってリアルな表現がなされており、見るべき点は多い。なお、ブリューゲルの《バベルの塔》は2点が現存しているが、今回出品されるのは2作目に当たるもの。
本展開催に当たり、ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館のシャーレル・エックス館長は「《バベルの塔》については3週間語ることができます(笑)」と会場を湧かせながらも次のように語った。「この大作を皆様にご覧いただけて、本当にワクワクしています。しかし、率直に言えばオランダ人にとっては、ボスの作品もブリューゲルと同じように重要なんです。ですので、展覧会全体をご覧いただきたいと思います」。
クローン文化財という新たな試み
なお今回は、東京藝術大学COI拠点がオランダ芸術科学保存協会と連携し、《バベルの塔》のクローン文化財(高精細複製画)を制作。縦横がそれぞれ実物の300パーセントという大きさのものが、実物と同じ展示室に展示されているので、作品細部はこちらでチェックするという楽しみ方もできる。また、上野の「東京藝術大学COI拠点 Arts & Science LAB,1F エントランスギャラリー」では、《バベルの塔》を3メートルを超える大きさで立体化。プロジェクションなども使用し、昼と夜、それぞれで異なる塔の様子を生み出し、新たな鑑賞体験を提示する。