Museum from Home:国立歴史民俗博物館「昆布とミヨク─潮香るくらしの日韓比較文化誌」
新型コロナウイルスの影響で、会期途中で閉幕した展覧会や臨時休館となってしまった展覧会などの展示風景を紹介する「Museum from Home」。第7回は、開幕日が未定の国立歴史民俗博物館「昆布とミヨク─潮香るくらしの日韓比較文化誌」をご紹介します。
日本と韓国、それぞれにとってなじみ深い海藻である昆布とわかめは、古くから日々のくらしの糧とされてきた。しかしながら儀礼食や贈答品という観点では、日本では昆布が、韓国ではわかめが重要な役割を果たしており、異なる文化的意味を持っている。そこで、「日本と韓国との関係を昆布とわかめに象徴させることができるのではないか」という発想から、日韓の海をめぐる生活文化を比較した企画展示が「昆布とミヨク─潮香るくらしの日韓比較文化誌」だ。
展示は3部構成。第1部「海を味わう」では、両国の食文化の歴史をひもとき比較する。和食では鰹節や昆布などの出汁から旨味を得るが、韓食ではエビやカタクチイワシなどを原料とする塩辛が味の基礎となる。また、日本の年中行事や人生儀礼では、さまざまな場面で海産物が使われるが、韓国の祖先祭祀でも、干したスケトウダラやイシモチ、タコなどが供えられ、人生儀礼では子供の無事の誕生と成長をワカメで祈る。こうした比較から、日韓それぞれの海産物にこめられた意味について考える。
第2部「海に生きる」では、漁師の技術や信仰など、海にまつわる日韓それぞれの文化を紹介。似ている部分もあれば違っている部分もある日韓の漁法だが、その背景には、海産物の嗜好や、それを獲るために重ねられてきた工夫が見られる。日本のコンブ漁と韓国のワカメ漁を例に船や道具を通して比較しつつ、さらに日本のマグロ漁と、韓国の干潟漁の様子を紹介する。
第3部「海を超える」では、日韓の漁民のかかわり方が変化する過程を追う。釣りや打瀬網といった季節的な小規模漁業は、やがて大規模で組織的な漁業へと展開。日韓の漁民のかかわり方も変化していった。また、日本人漁民による新たな漁法の導入や、東アジアの広域的経済圏への朝鮮半島の編入は、漁業に変革をもたらして食文化にも多大な影響を与えた。日韓の漁民の移動が、双方の生活文化に大きな変化をもたらしたことを提示する。
韓国と日本で、ほぼ同じ内容の展示を公開する画期的な試みとなる同展示。なお、3月に開設された国立歴史民俗博物館公式YouTubeチャンネルでは、同館の展示等に関する動画を公開。「昆布とミヨク-潮香るくらしの日韓比較文化誌」展示場の様子も担当教員が解説しているので、こちらもチェックしたいところだ。