2020.12.21

画家自身の子供時代と、描かれた子供について語る。奈良美智インタビュー

雑誌『美術手帖』の貴重なバックナンバー記事を公開。12月公開分は「巨匠アーティストのことば」をテーマに、世界的に活躍する作家たちの歴代のインタビューや寄稿を一挙に振り返る。本記事では、1995年7月号「快楽絵画」特集より、当時新世代ペインターとして注目された、奈良美智のキャリア初期のインタビューを掲載する。

編集部=文

Abandoned Puppy 1995 キャンバスにアクリル絵具 120x110cm © Yoshitomo Nara

 子供をモチーフとした作品などで知られ、国内外の幅広い層から人気を集める奈良美智(1959〜)。青森県出身の奈良は、87年に愛知県立芸術大学大学院を修了後、88年に渡独。ドイツ国立デュッセルドルフ芸術アカデミーで学び、その後ケルンに移住して、2000年までドイツを拠点に活動していた。

 のちに作家の代表的なイメージとなる、挑戦的な表情でこちらを見つめる子供たちが作品に登場し始めたのは、まさにこの時期。帰国後に横浜美術館ほかで開催した個展「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」で注目を集め、シカゴ現代美術館など海外でも個展を開催、世界での評価を高めていくこととなる。

 本記事では、アカデミー修了の翌年にケルンのスタジオで収録された、ドイツ時代のインタビューを紹介。書き手とつくり手をつなぐ「快楽」をテーマに、同時代の絵画を紹介した1995年の「快楽絵画」特集で、雑誌『美術手帖』が初めて奈良をフィーチャーした、キャリア初期の貴重な記事だ。

普通の人が淡々と生きるように

──子どもが作品のなかにほんとうによく出てきますね。

 あれはほとんどが自分のまぶたの裏に焼きついている過去の体験を現在の自分が見つめ直すことで出てきているものですね。過去の自分がいま子どもだったり、ハンディキャップを抱えていたりする、いわゆる弱者の人たちとダブってくるんですが、そこでなにかシンクロする部分で絵が生まれてくる。

──子どもの頃はどんな感じだったんですか。