「タコの滑り台」は著作物なのか? 機能のある実用品のデザインの著作権を考える
タコをモチーフにしたユニークな滑り台。この著作権をめぐる2つの会社の裁判において、タコの滑り台は著作物ではないという判決がくだされた。Art Lawの専門家である弁護士・木村剛大が、この事例から機能のある実用品のデザインの著作権について解説する。
タコの滑り台は果たして著作物なのか? 2021年12月、知財高裁で判決があり、結論は著作物ではないというものだった(*1)。
この事件では、タコをモチーフにした滑り台を製造、販売していた原告前田環境美術株式会社が、同じくタコの形状を模した滑り台を設置した被告株式会社アンスに対して、著作権侵害を主張して裁判になった。
原告のタコ滑り台は昭和46年ころ以降、全国各地から発注を受けて納入されていた。確かにユニークなデザインだ。
第一審の東京地裁(*2)、控訴審の知財高裁ともに原告の滑り台が著作物ではないと判断し、原告の請求を認めなかった。これは、従来の裁判例の傾向に沿った判断といってよく、実用品、特に立体的な実用品のデザインについて著作権法で保護されるケースはかなり少ない。
しかし、「滑り台」と聞くと、美術手帖の読者だと思い浮かぶ作品があるかもしれない。北海道札幌市の大通公園に設置されているイサム・ノグチの《ブラック・スライド・マントラ》である。
タコの滑り台は著作物ではないとすると、同じく滑り台の機能がある《ブラック・スライド・マントラ》も著作物ではないのか?《ブラック・スライド・マントラ》は著作物だとすると、タコの滑り台とはどのように区別されるのか?