EXHIBITIONS

産業と美術のあいだで 印刷術が拓いた楽園

2018.04.14 - 06.24

前田藤四郎 時計 1932

鈴木蕾齋 蝙蝠傘綿フラン子ル卸商 南為太郎 引札 1887頃

佐伯祐三 広告のある門 1925

高井貞二 感情の遊離 1932

前田藤四郎 時計 1932

若山八十氏 『変ないきもの』 1961

 高度に洗練された浮世絵や書籍、身の回りの品々など、日本は主に木版の技術によって古くから印刷文化を誇ってきた。明治に入ると、文字の印刷には活版が、図版の印刷には銅版、木口木版、石版の技術が西欧からもたらされて近代的な印刷産業が発展。実用的な需要だけでなく、印刷技術のなかにある版の創造的な側面に着目する人も現れ始め、複製を前提とした挿絵などの制作にとどまらず、印刷術を創作の技法に展開させた版画が広く関心を集めた。

 油彩画などの画面のなかにも印刷物が描かれ、あるいは貼られ、一般的な絵画のイメージとして統一された絵画空間に異質なものを加えることで作品の印象を変える効果を上げ、鑑賞者に新鮮な視覚体験をもたらしている。

 本展では、印刷資料や版画、また佐伯祐三や高井貞二の絵画などを通し、印刷術というひとつの産業がいかに美術の表現を豊かなものにしてきたかを展観。現在の技術が美術に与える新しい美術表現を予期しながら鑑賞したい。