千代紙 花鳥風月

　創業から200年以上続く和紙舗、榛原（はいばら）の貴重な和紙資料コレクションが公開される。

　榛原は1806（文化3）年、江戸日本橋に「雁皮紙（がんぴし）」の暖簾（のれん）を掲げた老舗。熱海産の雁皮紙をはじめとする良質な和紙で江戸中にその名を知られ、また絵半切れや熨斗（のし）などの「小間紙（こまがみ）」も扱った。なかでも木版摺りの千代紙は、その鮮やかさと精緻な摺りが評判を呼び、明治期の万国博覧会にも出品された。

　榛原では伝統的な文様が好まれた時代に、川端玉章（かわばた・ぎょくしょう）、柴田是真（しばた・ぜしん）、河鍋暁斎（かわなべ・きょうさい）など、当代きっての画家たちに小間紙のデザインを依頼。そこには三代当主榛原直次郎の「生活のなかに優れた芸術を取り入れる」という強い思いがある。

　佐野美術館で開催される展覧会「千代紙　花鳥風月」では、直次郎の号から名づけられた「聚玉文庫（しゅうぎょくぶんこ）コレクション」より、千代紙、絵封筒、短冊、団扇（うちわ）、熨斗、下絵など約130点を展示。可憐で粋な和紙（わがみ）の世界を紹介する。