EXHIBITIONS

油野愛子「When I’m Small / 小さかったころ」

2021.10.01 - 10.16

油野愛子 Narrative MARGUERITE 2021 © Aiko Yuno

油野愛子 The house 2021

油野愛子 KFC 2(Gold) 2021

油野愛子 THE HOUSE 2 2019

 油野愛子の初個展「When I'm Small / 小さかったころ」が小山登美夫ギャラリーで開催される。

 油野は1993年大阪府生まれ。2017年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)短期留学。18年に京都芸術大学大学院美術専攻総合造形領域を修了し、同年に関渡美術館交換派遣研究員レジデンスプログラム (台湾)に参加。主な受賞歴にCAF賞入選(2017)、群馬青年ビエンナーレ入選(2019)がある。

 幼い頃の未来への夢、希望と、大人になって知る現実。油野は、その違和感や悲しみ・喜び・怒りによる衝動を、立体、インスタレーション、絵画など幅広い方法で表現する。制作にあたって金属や樹脂、陶芸、アクリル絵具など多様な技術と素材を使用し、戯れながらその特徴を研究。意図的な表現に素材自体の自然な動きが加わることで、作品には作家自身の不安定な感情の揺れ動きが表れているように見える。

 本展は作家にとって同ギャラリーにおける初めての展覧会であり、立体と平面作品約15点を展示する。

 絵画作品《Narrative》は、アクリル絵具が一定のあいだスプレーを浮かせる特性や、樹脂の他素材とは馴染まないといったマイナス的特徴を利用し、絵画の見え方に立体的要素を取り入れて表現したシリーズ。水面のような光沢のある樹脂の表面は、重力を感じさせるとともに、静止した時間をも感じさせる。

 いっぽう立体作品《THE HOUSE》の素材の発泡ウレタンは、空気にふれることで泡を発生し、液体から個体に変わっていく。その化学反応を活かして、鮮やかな色彩のおもちゃの家が内面を吐き出すかのように、成長する思春期の体のように次第にかたちを変えて窓や扉から隙間なくあふれ出し、さらにその立体をブロンズに形成している。

 他方、平面作品《KFC》ではレンチキュラー(かまぼこ状のレンチキュラーレンズに印刷をし、平面でも3Dのような立体感や奥行きを出し、角度を変えると絵柄が変化する技術)を用い、キャンディや猫といった幼児性のあるモチーフを焼き払うように炎のイメージが重ねられている。

 油野の作品にふれ、小山登美夫は次のコメントを出している。「油野愛子さんの作品には、たびたび出会っているのですが、六本木のANBでの展示が衝撃的でした。描くというのではなく、なにかが起きてしまっている感じ。実際には丁寧な作業の末に成り立っている作品なのですが、物体として生々しく、視覚にも触覚にも響いてくる感じが新鮮でした。是非、今回初めてとなる個展を体感してみてください(小山登美夫)」。