EXHIBITIONS

KMNR™「ポーズ」

2022.04.01 - 04.24

KMNR™「ポーズ」より

KMNR™「ポーズ」より

KMNR™「ポーズ」より

KMNR™「ポーズ」より

 谷口弦、桜井祐、金田遼平によるアーティスト・コレクティブ、KMNR™(カミナリ)の個展「PAUSE(ポーズ)」がVOILLDで開催されている。

 カミナリは2020年に結成。メンバーは、佐賀県名尾地区において300年以上の歴史を持つ名尾手すき和紙の7代目・谷口弦、編集者の桜井祐、アートディレクター・金田遼平の3人だ。

 カミナリは伝統的な手すき和紙の技術を用いて再生された紙「還魂紙」を使って、様々な時代の「もの」に宿る魂やストーリーを紙にすき込み、先人達が積み重ねてきた和紙という歴史を現代の観点で解体し、新たな価値を吹き込み再構築した平面、立体作品を制作している。

 江戸時代以前、反故紙を用いて漉き直された再生紙は、原料の古紙に宿っていた魂や情報が内包されていると考えられていたことから「還魂紙」と呼ばれていた。カミナリは、その還魂紙を活動のコンセプトであると同時に軸となるマテリアルとして用いることで、過去と現在、変化し続ける未来、そして異なる文脈の物事をつなぎ合わせるという役目を持たせている。素材の持つ歴史と特性を熟知し、様々な要素を重ね作品に投影することで、和紙の歴史を通観するものとしてもとらえることができる。

 本展では、カミナリが近年制作を続けている関守石をモチーフにした新作の立体作品のシリーズを中心に展示している。

 関守石はシュロ縄で石を十字に結んだもので、茶道を大成させた千利休によって生まれたと言われている。茶庭や神社仏閣の境内において、置かれることで通行止めの意味となる関守(門番)の役を持った古くからのサインとして、現在でも多くの場所で活用されているオブジェクトだ。

 土地の境域に置かれ行き来や空間を分断する目印となるその関守石を、カミナリが個性あふれる有機的な石の造形として、和紙の原料の塊で、そして伝統的なシュロ縄は現代で多用されているビニール紐やチューブなどで巧妙にサンプリングすることで、過去の積み重ねの連続が現在につながっていき、多様な文脈の物事を新たな解釈で接続していくことで、未来が開拓されることの重要性を示唆している。

 一見ポップな印象を抱くカミナリの作品群だが、それらに目を留め一時停止することで過去に立ち戻り、現在が通過点となって、新たな価値とともに再生され未来へと通じてゆく可能性を考える糸口となっている。

 会場では、新たな試みで制作された、約100点に及ぶ新作の立体作品が展示されている。