レアンドロ・エルリッヒ展が60万人超えで圧倒。2018年上半期 美術展覧会入場者数 TOP10
2018年上半期の美術館展覧会を数字で回顧。日本全国の美術館・博物館で行われた展覧会のなかから、入場者数TOP10を紹介する。※対象展覧会は2018年1月1日〜6月30日の期間に開催されたもので、2017年から会期がまたいでいるものも含む。7月20日現在で回答がなかったもの、ウェブサイト公開不可のもの、入場者数を公表していないものは含まない。またジャンルは美術、あるいはそれに準ずるものに限る。
SNSが動員に影響
SNSが今年の上半期入場者ランキングを制した。2018年上半期の入場者数TOP10は、他を大きく引き離し、森美術館で開催された「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」(2017年11月18日〜2018年4月1日)が61万4411人(六本木ヒルズ展望台 東京シティビューとの共通チケット)を記録。ダントツの1位となった。
同展は、金沢21世紀美術館の常設作品《スイミング・プール》(2004)で知られるアルゼンチン出身のアーティスト、レアンドロ・エルリッヒによる世界初の大規模個展。全44作品のうち8割が日本初公開となった同展は、開催前より大きな注目を集め、開幕から48日目で入場者数20万人を突破。同時点で森美術館側は「予想を上回る数字」というコメントを出していたが、結果的に当初の動員目標だった40万人を大きく上回る数字となった。
この61万4411人という記録は、開館記念展の「ハピネス」(73万985人)に次ぐ森美術館歴代2位。同展では建物の壁にぶら下がったかのような写真が撮れる《建物》をはじめ、参加型の作品を数多く展示。すべての作品が写真撮影可能という条件も重なり、SNSで数多くシェアされたことが動員につながった。SNS、とくにInstagramが動員に及ぼす影響力は大きい。
根強い印象派人気
2位を記録したのは、根強い人気を誇るゴッホだ。37万31人を動員した東京都美術館「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」(2017年10月24日~2018年1月8日)は、日本初のファン・ゴッホ美術館との共同企画展。同展は、そのタイトルの通りゴッホと日本の関係性を検証するもの。浮世絵を大胆に模写した油彩画《花魁(渓斎英泉による)》(1887)など、ゴッホが日本から影響を受けて描いた作品を展示するとともに、葛飾北斎や歌川広重などの浮世絵も展示。ゴッホと浮世絵の直接的、あるいは間接的な影響を示す試みが見られた。
ランキングの常連である印象派も忘れてはいけない。3位にはスイスで活動した実業家、エミール=ゲオルグ・ビュールレのコレクションを紹介した国立新美術館の「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」(2018年2月14日〜5月7日)が36万6777人でランクインした。ルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢》、モネ晩年の大作《睡蓮の池、緑の反映》、そしてセザンヌの《赤いチョッキの少年》など、印象派の傑作が勢揃いした同展。約60点の出品作品のうちおよそ半数が日本初公開ということもあり、35万人を超える動員へと結びついた。
なお、1日あたりの入場者数に関しては、東京国立博物館で行われた特別展「仁和寺と御室派のみほとけ― 天平と真言密教の名宝 ―」(1月16日〜3月11日)が6751人でトップ。仁和寺創建当時の本尊《阿弥陀如来坐像および両脇侍立像》、秘仏《薬師如来坐像》をはじめ、大阪・葛井寺(ふじいでら)の《千手観音菩薩坐像》など、70体の仏像が機会となり、大きな48日間の会期で32万4042人の入場者数を記録している。
2018年下半期の行方は?
総入場者数では、レアンドロ・エルリッヒが2位以下を大きく引き離す結果となった2018年の上半期。しかし、下半期には「ミラクル エッシャー展」(6月6日〜7月29日)、「没後50年 藤田嗣治展」(7月31日〜10月8日)、「フェルメール展」(10月5日〜2019年2月3日)、「ルーベンス展」(10月16日〜2019年1月20日)そして「ムンク展」(10月27日〜2019年1月20日)など、いずれも日本で人気の高い作家たちの大規模展が控えている。2018年は後半戦でランキングが大きく変動しそうだ。
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