蔡國強からアートワールドが舞台のホラーまで。Netflixで見たいアートムービー
スマートフォンやパソコンで、いつでも見たい動画コンテンツを視聴できるストリーミングサービス。今回はNetflixから、アーティストのドキュメンタリーやアートワールドで繰り広げられるサスペンスなど、アートを題材にした映画を紹介する。Netflixオリジナルコンテンツ以外は配信期限があるため、気になる作品は早めにチェックしてほしい。
火薬を用いた壮大な作品の裏側。『空のハシゴ:ツァイ・グオチャンの夜空のアート』
まず紹介するのは、火薬を用いた作品を多く手がけ、「爆発のアーティスト」とも称される中国人アーティスト・蔡國強(ツァイ・グオチャン)のドキュメンタリー『空のハシゴ:ツァイ・グオチャンの夜空のアート』。本作では、祖母の100歳の誕生日を記念して発表した《スカイ・ラダー》(2016)の制作過程と、蔡の人生が交差して映し出される。
著名な書家である父との関係、文化大革命の影響を受けた幼少期、作品を開花させるきっかけとなった日本での生活、現在の中国への思い、そして、妻と子供と暮らす現在のニューヨークでの日々。ジャーナリストらによる冷静な考察も織り込まれた79分の映像は、ひとりの人物がどのようにアーティストとして成功したか、その輪郭をはっきりと描き出している。クライマックスでの《スカイ・ラダー》の美しい成功シーンも必見だ。
|『空のハシゴ:ツァイ・グオチャンの夜空のアート
監督:ケヴィン・マクドナルド
出演:蔡國強ほか
時間:79分
Netflixオリジナル作品 『空のハシゴ ツァイ・ゴンチャンの夜空のアート』独占配信中
激動の時代を生きた狂気のアーティスト。『ズカルスキーの苦悩』
スタニスラフ・ズカルスキー(1893〜1987)というアーティストを知っているだろうか? 1916年にシカゴ美術館で行った個展では、ある意見に反発し、会期中にも関わらず展示作品をすべて引き剥がすなど、幾多の過激な振る舞いによって「脱走したフランケンシュタイン」とも呼ばれた彫刻家、画家のズカルスキー。1980年代にはカルトヒーローとして再び脚光を浴びたこのアーティストの数奇な人生に迫ったドキュメンタリーが『ズカルスキーの苦悩』だ。
世界中の古代文明を研究し、「人類はどこから来て、どこへ行くのか」といった命題に対し、奇想天外な自論を生き生きと語る生前のインタビューはどこかユーモラスに映る。しかし、第二次世界大戦で全作品を破壊され、祖国・ポーランドとアメリカを行き来しながら、ひたむきに作品制作に取り組んだひとりの「奇人アーティスト」をかたちづくる苦悩もありありと見えてくる。
なお本作は、ズカルスキーと交流があった俳優のレオナルド・ディカプリオがプロデューサーを務めている。
|『ズカルスキーの苦悩』
監督:イレク・ドブロヴォルスキー
出演:スタニスラフ・ズカルスキーほか
時間:105分
Netflixオリジナル作品『ズカルスキーの苦悩』独占配信中
批評家からギャラリストまで、アートワールドが舞台のホラー『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』
全米最大のアートフェア「アート・バーゼル・マイアミ」のシーンから幕を開けるのが、ロサンゼルスを拠点とする著名な美術批評家、ギャラリストらが主人公のホラー映画『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』だ。
「自分の死後、描いた作品はすべて廃棄してほしい」という、ひとりのアーティストの遺言を無視したことで、凄惨な事件に巻き込まれて行く登場人物たち。
本作の表面はあくまで(B級)ホラーだが、巨大化するアートマーケットのマネーゲームに精を出す人々への批判的な眼差しも見えてくる。インスタレーションから絵画まで、様々な「作品」たちによる復讐劇も見どころだ。
|『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』
監督:ダン・ギルロイ
時間:112分
出演:ジェイク・ジレンホール、レネ・ルッソ、トニ・コレット、ゾウイ・アシュトンほか
Netflixオリジナル映画『ベルベット・バズソー: 血塗られたギャラリー』独占配信中